ここ数年、現代演劇を牽引してこられた先達の訃報を耳にすることが多くなった。
 ひと昔前になるが、若くして逝かれた如月小春さんのときは寂しかった。如月さんの『家、世の果ての』は第1回の本企画で上演され、若い演者と演出で新しい生命を吹き込まれ、また開花した。如月作品を演出し、何かをつかんだ林慎一郎さんのその後の怪進撃(?)は嬉しい限りである。
 第3回となる今回は30代の3人の演出家が自ら食指を動かした作品群が並ぶ。 下鴨車窓が挑む『小町風伝』(太田省吾)は沈黙劇として上演されたがテキストは言葉で溢れる。作家としての田辺剛さんの筆致には寓話的な味わいがあり、それが本作とどう絡み合うか楽しみだ。 『さらば箱舟』(寺山修司)とニットキャップシアターは異色の取り合わせ。学生の頃、名画座の暗がりで観たその映画は確か土俗社会を描いていて、最終場面では唐突に百年後の風景が現れ、俳優達が記念写真に収まる。ごまのはえさんのしたたかな仕掛けに期待したい。 A級MissingLinkは『悲惨な戦争』(竹内銃一郎)に挑戦する。この作品は80年代、学生劇団によって盛んに上演された。バブルに向かう時代の空気を挑発的に撃つ何かが、学生たちを駆り立てたのだろう。悲惨な時代のお茶の間戦争は私たちに何を提示してくれるだろう。土橋淳志さんの切り口やいかに。
 3人の演出家が本気で先達のテキストと斬り結ぶ。見えるのは未来への希望か。衰弱へ向かう現代か。いずれにせよ、その作業プロセスにこそ意義があると思う。

アイホール ディレクター 岩崎正裕


主催:公益財団法人伊丹市文化振興財団・伊丹市
平成23年度 優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業
助成:財団法人アサヒビール芸術文化財団


会場
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