アイホールと舞踊家ボヴェ太郎による共同製作作品・第3作。能楽堂において公演を行うなど、近年、能への関心を強めているボヴェ太郎。 今作では、7名の能楽師を共演に迎え、自然の情景と結びつく美しい大和言葉による詞章と、洗練された音楽によって、感覚の豊かな拡がりを喚起させられる、 能の名作《杜若》に挑みます。能の上演形式を踏まえた空間に、能楽とダンスの呼応を通して生起する、新たな"場"の可能性にご期待下さい。


私はこれまで、空間と身体の呼応によって生成される“場”の可能性を、舞踊を通して模索して参りました。 このようなスタンスを深めてゆくようになった背景の一つに、能を舞う身体の残影から齎(もたら)された、感覚の記憶がございます。 ― 能舞台に佇んでいた演者が舞い始めた時、眼前で語られてきた物語の世界は遠景に退き、物語と、演者と、舞台をまなざす私との間に生まれた、充実した空白。 そこに、感覚の豊かな拡がりを体感しました ―。 少年時代の、この幸福な体験以来、観る者の想像力に働きかけ、余白の中に響いて来る世界を、観客自らが創造してゆくことを促す、能の構造の力に魅せられ、強い関心を寄せて参りました。 今作では御縁あって、7名の能楽師の方々と共に、人と風景の気配が重層的に響きあう、夢幻能の名作『杜若』に取り組ませていただくこととなりました。 観客の皆様それぞれとの間に、充実した“場”が生成されることを願いながら、舞台をつとめさせていただきますので、ご高覧のほど宜しくお願い申し上げます。

ボヴェ太郎


アイホールダンスコレクションvol.62
関西を拠点とするパフォーミングアーティストとの共同製作事業 “Taka a chance project024”
ボヴェ太郎 舞踊公演『消息の風景 ― 能《杜若》― 』


※上の画像をクリックして頂くと裏面が閲覧できます。

構成・振付・出演=ボヴェ太郎
能楽囃子 | 笛=杉信太郎、小鼓=曽和尚靖、大鼓=谷口有辞、太鼓=前川光範
地謡 | 吉浪壽晃、浦部幸裕、田茂井廣道

日時:2010年7月2日(金)19:30、3日(土)15:00
※両日とも公演終了後、ポスト・パフォーマンス・トークを行います。
※開演1時間前より受付開始。入場整理券を発行します。
※開場は開演の30分前。
※未就学児童の入場はご遠慮ください。

料金(全席自由)
一般 前売3,000円、当日3,500円  
学生&ユース(25歳以下)・60才以上 前売2,000円、当日2,500円
※学生&ユース・60才以上のお客様は、当日受付にて学生証か年齢の分かる書類をご提示ください。

チケット取扱 
電子チケットぴあ Tel:0570-02-9999 [Pコード:403-749]http://t.pia.jp/
アイホール Tel:072-782-2000 info@aihall.com
JCDNダンスリザーブ(オンラインチケット予約)http://dance.jcdn.org/

助成:社団法人私的録音補償金管理協会(sarah)、財団法人アサヒビール芸術文化財団
主催:財団法人伊丹市文化振興財団・伊丹市
平成22年度文化庁芸術拠点形成事業


能《杜若》kakitsubata
古典文学の傑作『伊勢物語』に取材した作品。“からごろも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ” 昔、在原業平が東下りの折り、美しく咲き匂う、沢辺の杜若を前に、句の頭に“かきつばた”の5文字をおいて詠んだとされる、秀歌を背景に構想された夢幻能。 歌に詠まれた杜若の精が、ひととき人の姿を成して現れ、典雅な伊勢物語の世界を語り舞う。 水面に映る紫の杜若の花、その背後に業平と伊勢物語を彩る女性達の姿が重ね合わされ、人と風景の幽かな気配が繊細に響き合うなか、無人称的な舞の時間が紡がれてゆく、能の名作。


ボヴェ太郎 [ Taro Bove ]
舞踊家・振付家。81年生まれ。02-03年渡欧、インプロヴィゼーションテクニック等を学ぶ。 "空間の<ゆらぎ>を知覚し、変容してゆく「聴く」身体"をコンセプトに創作を行なう。 主な作品に『不在の痕跡』、『implication』、『Texture Regained-記憶の肌理-』等。 劇場作品の他、『余白の辺縁』(セルリアンタワー能楽堂)、『in statu nascendi』(世田谷美術館)、「カンディンスキー展」(京都国立近代美術館)における公演、 『陰翳-おもかげのうつろい-』(国指定重要文化財・旧岡田家住宅)等がある。

  Photo:Toshihiro Shimizu