アイホールでは、2013年12月7日(土)、8日(日)に、コンタクトゴンゾ×ホンマタカシ『熊を殺すと雨が降る』を開催します。
 殴り合いともダンスともつかない身体の接触、即興的なパフォーマンスが持ち味のcontact Gonzoは、美術や音楽などの他ジャンルからの注目度も高く、国内外問わず人気急上昇中。アイホールとの共同製作事業“Take a chance project”において、同シリーズ3作目の集大成となる今回は、写真家・ホンマタカシを迎え、異色のコラボレーションによる新作を発表します。上演に先駆けてcontact Gonzo代表、塚原悠也さんにお話を伺いました。




■ 写真家、ホンマタカシさんとの出会い

 去年、ロシア・モスクワで開催された、日本現代美術展・特別企画「Double Vision: Contemporary Art from Japan」という国際交流基金主催の展覧会に参加しました。若手からキャリアのあるアーティストまで、日本のコンテンポラリー・アートを幅広く紹介する企画で、僕らはパフォーマンスをしました。その際、同じく参加作家であり、現地でレクチャーをされていたホンマさんに、初めて僕らのパフォーマンスを見ていただきました。そこで興味を持ってもらい、ご飯を一緒に食べたり、飛行機の待ち時間にブラジリアン柔術を教えてもらったり(笑)。話す時間も結構あり、「いつか一緒にできたら」という話になりました。
 もともと、ホンマさんの写真は、僕もメンバーの三ヶ尻くんも『STUDIO VOICE』などの雑誌で学生時代からずっと見ていましたし、ロンドンで仕事をされていた『i−D』なんかも見ていました。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での展覧会、ホンマタカシ『ニュー・ドキュメンタリー』を見に行くと、雑誌に掲載されたそれらもたくさん展示されていて、90年代後半からずっと作品を見続けていたのだなと気付きました。日本の写真のイメージを引っくり返した、すごい人なんだろうなと思います。


■ 写真家とのコラボレーション

 僕たちは、インスタントカメラを使ってパフォーマンスを撮影し、その画像をウェブにアップしたり、去年の『Abstract Life 《世界の仕組み/肉体の条件》』では、サウンド・パフォーマンスと共に写真展示もしました。これまでも、メンバーは撮ることが好きで、写真というメディアを使うことが多かったということもありますが、写真家とのコラボレーショ ンという仕事はとくに今までと違った考え方を要すると思うので、じっくり関わりたいと考えていました。
 僕自身、パフォーマンスをやる前から、写真に興味があって、ダンスと出逢ったのも、細江英公さんの写真集『鎌鼬』のなかの土方巽さんを観たのがきっかけです。写真からダンスや舞台の世界を知ったとも言えます。作品に画像をよく使うのは、自分たちがやっていることを客観的に考えたい、見せたいという気持ちからだけど、パフォーマンスの現場の空気感ってなかなか伝わらない。でも、1枚の写真で伝えられる可能性はあると思います。動きを切りとった写真だと、後ろにいる人の顔が気になったり、「この人、この後に倒れるのかな?」とか、映像よりも前後を想像することができると思う。
 ホンマさんは、東京の郊外や人物、いろんなものを被写体にされるけど、それらはフラットなイメージで意味を散らして逃がして行く部分があるように思う。そういう部分をゆっくりと感じ始めたというべきか、自分たちも近いものがあると思います。写真家とのコラボレーションが、どこまで、どういう方法で可能なのかまだまだ考えているところです。例えば、写真がバンと舞台奥に映し出され、その中に僕らのパフォーマンスがあるというようなイメージも、シンプルだけど、いろんな意味を派生させることができるだろうとは思うし、その奥にはまだまだ何かあるはずです。


■ 鹿猟の撮影に同行

 このアイホールでの“Take a chance project”で一緒にやろうと決まってから、ホンマさんより、鹿猟を撮影されている知床へ「一緒に行きませんか」と誘っていただき、まる2日間、猟に同行しました。
 初日の朝に、いきなり子鹿も含めて11頭くらい仕留められていました。殺戮現場のようで、もう、すごかったです。鹿が増えて生態系のバランスが崩れてきているので、その調節をするための猟です。食用や何かに利用するためではないけれど、結果、仕留められた後の鹿は食べられたりもしていて、僕らもたくさん食べました。猟師たちはとにかく個性的な人たちで、いろんな話を聞かせてもらって、貴重な時間となりました。
 ホンマさんがライフワークのひとつ、鹿猟に同行して撮影した写真シリーズ『Trails』は、このタイトルどおり、ショッキングなそのものを被写体にしたものはなく、血痕とか周辺の痕跡から見せるような写真です。本作でも、知床で採集した写真や映像、音も使うと思いますが、直接的ではなく、そのような一端を見せるものになると思います。


■ 本作について

 今回は、これまでアイホールで製作した1作目『Musutafa United V.S. FC Super Kanja』、と2作目『Abstract Life 《 世界の仕組み/肉体の条件》』を引き継いだ、3本目の新作にしたいと思っています。これまでのcontact Gonzoの作品は、おおまかな流れやルールは決まっているけど、即興性が強いものでした。今回は、もう少し文脈をしっかり作って構成していきたいと思っていますが、猟のときに採集した音や猟師のおじさんたちの声などを素材とした、音だけを使用したシーンも作るかもしれません。
 知床での鹿猟をホンマさんとのコラボレーションで作品化するにあたって、この状況をそのまま模倣してもしかたないと思うので、具体的に、直接的に提示するのではなく、断片を重ねることによって、抽象的に猟の状況をつくっていきたいです。モノとモノの陰を動いている気配を感じさせるとか、いろいろと考えています。最近はゴムを使ってモノを飛ばすこともやっているので、ライフルじゃないけど、それを使って人にものをぶつけてみるとか、僕らが街でできる何かしら猟に近い範囲のことを中心に動きはつくって行こうかと思います。


■ タイトル「熊を殺すと雨が降る」

 タイトルを決めるのは、なかなか大変でした(笑)。9月のプレ企画・パフォーマンス&トークの時には、まだ決まっていなくて…。その後の打ち合わせで、見に来てくださった編集者の方やキュレーターの方などを巻き込んで、いろんな案を出し合って決めました。
 この言葉は、マタギ(東北地方で狩猟に従事した人の呼び名)に語り継がれる言い伝えだそうです。本作のポイントとなる〈狩猟〉を連想させるものですが、2つの意味があり、「熊を神聖なものと考えてそれを撃つと山の神が怒って雨が降る」という意味と、「雨が降る前は熊が食い溜めをするので太って撃ちやすい」という意味があるそうです。自分たちではなかなか出てこない雰囲気のタイトルなので、ホンマさんはじめ、いろんな方と一緒に決められて、結構気に入っているタイトルです。取材したのは、熊猟でなく、鹿猟なんですけど(笑)。
 ダンスやパフォーマンスなどの舞台芸術が好きな人だけでなく、写真や映像に興味のある方とか、いろんな方々に見に来て欲しいと思います。


(2013年11月 アイホールにて)

プロフィール

塚原悠也  http://contactgonzo.blogspot.jp
1979年京都生まれ。2002年よりNPO法人DANCE BOXにボランティアスタッフとして参加。2006年にcontact Gonzoを垣尾優とともに立ち上げる。現在は5名で活動。関西学院大学大学院文学部美学専攻修士課程修了(永田彰三ゼミ)。人と人とが殴り合い接触するパフォーマンスをはじめ、そのリハーサル代わりに山や森に入った経験から「山サーフィン」を開発。巨大なコンクリートの板や、土砂崩れの跡等をメンバーが滑り落ちる映像を制作する。


ホンマタカシ http://betweenthebooks.com
1962年東京生まれ。写真家。1999年、写真集『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞受賞。2008年、ニューヨークのApertureから写真集『TOKYO』を刊行。1993年から2007年までの間に東京をテーマに撮影した作品が収録され、それまでの集大成的な内容になっている。2009年、単行本『たのしい写真 よい子のための写真教室』(平凡社)を刊行。このほか写真集多数。2011年から2012年にかけて、自身初の美術館での個展「ニュー・ドキュメンタリー」を日本国内3ヵ所の美術館で開催。現在、東京造形大学大学院客員教授。





【AI・HALL自主企画】
関西を拠点とするパフォーミング・アーティストとの共同製作事業
Take a chance project030

コンタクトゴンゾ×ホンマタカシ
『熊を殺すと雨が降る』

構成・演出・出演:コンタクトゴンゾ(塚原悠也、三ヶ尻敬悟、金井悠、松見拓也、小林正和)
構成・演出・映像:ホンマタカシ
舞台監督:尾崎聡
音響:西川文章

2013年12月7日(土)~8日(日)
公演の詳細は、こちらをご覧下さい。 → こちら