アイホール・アーカイブス
アイホール・ショーケース~イタミつながるブタイのミライ~
<&future >参加団体座談会インタビューVol.1

アイホールでは3月に、主催事業として、「アイホール・ショーケース~イタミつながるブタイのミライ~」を開催します。アイホールの過去・現在・未来を映し出す、短編作品のショーケース公演になります。2週に渡って開催される本企画の2週目は舞台芸術事業の未来を担うアーティスト・団体との出会いを創造するための<&future>。その参加メンバーとの座談会を2本に分けてお送りします。聞き手は、本企画のアドバイザーを務める若旦那家康さんです。
★自己紹介

若旦那家康(以下、若旦那): この度はご応募いただきまして、そして採択を受けていただきまして誠にありがとうございます。<&future>の方の座談会第1弾です。では、チラシの登場順で、まず<&futureA>から劇団白色の大川さんお願いします!
大川朝也(以下、大川):「劇団白色」の大川朝也と申します。僕は以前、アイホールの伊丹想流劇塾(以下、劇塾)[1]に通っていたことがあります。その関係で、ショーケース期間中に販売する劇塾の卒塾公演の課題作品を集めた戯曲集『筆ノ跡』の企画・製作もしています。
浦尻広翔(以下、浦尻): 「劇団White Palette」で今回演出を担当する浦尻広翔と申します。アイホールの舞台に立つのは初めてです。僕らは普段、神奈川県で活動をしています。中学校の演劇部のOB達が集まって旗揚げをした劇団で、今も基本的には学生のメンバーが中心となっています。
若旦那: 浦尻さんは劇団でいつも演出をされているんですか。
浦尻:役職はみんなで順繰りしながら、全員で作っていっているので、いつも同じ立ち位置ではないのですが、今回は僕が演出を担当することになりました。
小笠原彩(以下、小笠原): 「でめきん」で今回は作・演出を担当する小笠原彩です。
若旦那: 「でめきん」は出演者にも小笠原さんがいらっしゃるんですけど。これは偶然なんですか。
小笠原: 偶然です(笑)出演者は小笠原愛子さんですね。「でめきん」には先に所属していらしていて、私は作・演出として昨年加入したばかりです。「でめきん」は女性4人の劇団になります。
若旦那:次は<&futureB>寿ロータリーさんは、お二人が座談会に参加ですね。可知さんからお願いします。
可知瑞季(以下、可知):「寿ロータリー」制作の可知です。我々はアイホールの舞台に立つのは初めてです。この団体は、ショーケースに応募するために作ったユニットになります。豊岡の芸術文化観光専門職大学の在学生・卒業生で構成されています。ユニット名は、兵庫県の豊岡市にあるロータリー交差点が「寿ロータリー」というので、そこから名付けました。SF回転寿司演劇をするために集まったゲン担ぎ集団と謳っています。皆さんに寿が巡ってくることを祈って演劇をする集団です。座談会には出演者の三浦も参加しています。
三浦規寛(以下、三浦): 初めまして。三浦規寛です。よろしくお願いします。
若旦那:では、氷河企画からペレイラさんお願いします。
F.O.ペレイラ宏一朗(以下、ペレイラ): 今回、氷河企画の演出を担当させていただきますペレイラと申します。自分は普段、氷河企画のメンバーではありません。氷河企画は俳優で出演される原晶子さんの一人ユニットです。以前一度、京都のショーケース型のイベントに氷河企画さんの作・演出として参加させてもらったことがあり、そのご縁もあって、今回のアイホール・ショーケースでも作品の演出を担当することになりました。今回の脚本は、福島県いわきの劇作家・絵戸キリコさんが書かれています。
若旦那:じゃあ、絵戸さんとペレイラさんは初めての組み合わせですね。
ペレイラ:原さん以外の方はキャストも含め全て初顔合わせになります。
若旦那:それは、ワクワクしますね。それでは最後、2日目の<&futureC>から増永さんお願いします。
増永和華(以下、増永): 演劇ユニット「ココアシガレット」fromペイント・タレントの増永和華です。私たちは、2025年の5月に旗揚げした大阪芸術大学の舞台芸術学科の在学生14人で構成されている学生劇団「ペイント・タレント」に所属しています。その中から3人で作ったユニットが「ココアシガレット」になります。3月に名古屋で開催される全国学生演劇祭にも出場します。
★作品の特徴や検討している演出など
若旦那:テーマは「未来」とされていましたが、新作か既存かという枠組みはなかったかと思います。みなさんの作品は新作でしょうか、それとも再演ですか。あと、上演時間は30分〜60分という規定があったと思いますが、今のところどれくらいの上演時間になりそうなんでしょうか。

ペレイラ:氷河企画は新作です。絵戸さんは福島県出身で、3.11東日本大震災でも被災されたそうです。作品も震災を題材にとりあげつつ、いわきの海が見える喫茶店に集う人たちの何気ない日常が描かれています。ショーケースというのもありますし、全て自分のオーダー通りに演出ができるテクニカル環境はないとは思っています。作戯曲自体はすごく短くて、読み合わせは、15分で終わりましたが、場転込みで30分ぐらいのパッケージにしたいです。ただ戯曲的に無理に引き延ばすのもちょっと違うのかなとは思ってはいるので、作品の魅力を落とさないようにシーンの流れる時間を楽しんでもらえるようにしたいと思っています。
大川:劇団白色も新作です。もう書き上がってはいますが、改稿も進めています。上演時間は60分くらいを目指しています。今回の戯曲は、僕の地元の香川県の田舎が舞台ですが、アイホール全体が田舎の空気感に包まれたらいいなと思っています。アイホールは天井も高いし横も広い大きい空間なので、出来るだけ全て使いたい気持ちはあります。静かなシーンとか激しいシーンの緩急もつけて作っているので、そういったところもエンタメとして楽しんでいただけると思っています。

浦尻:僕らは、既成作品を上演します。都立千早高校の演劇部が上演した『7 月29 日午前9 時集合』です。千早高校は柏木陽さんという方が監修をなさっていて、柏木さんの言葉を借りて言うと、「状況報告演劇」というジャンルですね。それが、私達にとってやったことがない分野で、面白いなあと思ったので今回選びました。上演時間は45分くらいを目指しています。
小笠原:私たちは再演です。2025年8月に大阪十三のスペースコラリオンで上演した20分くらいの作品を、45分くらいの台本に改稿しています。演出も変えていて、出演者に「再演やのに再演じゃないみたい。初めてやるみたい」と言われるほど要素が追加されてます。
若旦那:上演時間が倍になるということは、セリフも倍近くになっているということですもんね。それは大変だ(笑)コラリオンは僕も行ったことありますが、明るい平土間のようなスペースでアイホールとは広さも雰囲気も全然違いますよね。
小笠原: そうですね。アイホールは劇場なので天井がすごく高いし、照明もたくさん使えるので、光の演出に注目しています。また、コラリオンはお客さんとの距離も近くて家庭的な感じの雰囲気でした。アイホールとは空気感が全然違うので、その雰囲気をどう変えるか、とても悩んでいます。

増永:私たちは新作です。高校演劇をしていた時代には台本も書いていたんですが、大学に入学してからは初めての脚本執筆になります。今回のユニットは私の家によく泊まりに来る2人がメンバーに加わっているのですが、私の家をそのまま舞台化しようと思っています。抽象的にはしたいので、全てではないですが、私の家の家具も持っていこうと思っています。上演時間は50分くらいを目指しています。
若旦那:家がすっからかんになりそう!(笑)増永さんは大学生ですが、アイホールで何か作品を見たことはありますか。
増永:2025年2月に上演していたニットキャップシアター『さらば、象』[2]を観劇しました。アイホールにすごく興味を持ったと同時にアイホールが閉館することをこの作品で知りました。だから、ショーケースの話を聞いた時に、ぜひアイホールの舞台に立ちたいと応募しました。
若旦那:なるほど。滑り込みで間に合ったと。そういう方は他の参加団体にも多いでしょうね。
可知:私たちも新作です。まだ稽古がこれからですが、作・演出の蛭田と台本というかリリックについては何度かやり取りをしています。彼女が過去に科学を学んでいたので、台詞がサイエンスフィクション的な壮大さと、ショーケースのコンパクトさをどう化学変化させようかと考えています。また、アイホールのような大きなステージを、いかに小さく使うかも同時に目指しています。
若旦那:空間を広く使いたいという人も、あえてコンパクトに使いたいという人もいて、それぞれの演出の違いも面白そうですね。
★作品の見どころやアピールポイントについて
若旦那:最後に作品の見どころや来場者へのアピールポイントなどあれば教えてください!では、ペレイラさんから。
ペレイラ:俳優さんもそれぞれ出自が違うので、本当に座組がほぼ初めましてという状態です。逆にそういう相乗効果というか、ひとつのメソッドに限らないような、いろんなバリエーションや人間味が表現できるのかなと思っています。アイホールで普段出演されていなかった方たちが舞台上でお芝居をされるということも、この企画を通しての魅力だと思います。作品のことでいうと本作は構造上、震災当時のことがフラッシュバックするシーンがあります。作品の登場人物の1人で福島から東京の美大から帰省して、舞台となる喫茶店の客とやり取りするんです。そこで言われた一言で震災の事を思い出すシーンっていうのがあるんです。ただ絵戸さんも、震災っていうものを極端に悲惨な思い出できついものとして描きたくはないとおっしゃっていて。実際に、その被災地にいた人たちの記憶や温度感を演劇だからできるフィクションの魅力に乗せて、この関西のチームで作ることができたらいいなと思っています。
若旦那:氷河企画さんはレクチャーも担当されますね。
ペレイラ:はい。3月20日(金・祝)14:00〜福島県にいらっしゃる絵戸さんとオンラインでつながり、3.11東日本大震災のことについてだったり、それからのいわきのことだったり。被災した当時のことをお話される予定です。伊丹の方にもぜひ参加いただきたいですね。
※氷河企画主宰の原さんがアイホールより補助

小笠原: 「でめきん」は、『モデュール』というタイトルの作品を上演します。モデュールは、建築の用語で基準寸法という意味です。建築は、メートル/尺/インチとか、マスを決めてから組み立てて設計図を書きます。それをモデュールと言います。モデュールは、元を辿れば人の歩幅とか、人が動きやすい角度とか、上半身と机の距離とか、いろんな人が過ごしやすい物から生まれています。生活の中で特別な関係でずっと一緒に過ごしてきた幼馴染3人たちがどのように距離を測って、自分たちの「モデュール」を見つけていくのかというのが主軸になっています。登場人物が自分なりのモデュールを見つけられなくて悩み苦しむ描写は、クリエイターの人たちにとっては重なる部分も多くあるのではと思います。人間としての距離感=モデュール自体も昔と今では意味が違ったりするので、未来のモデュールはどうなっているかを観ている人に想像してもらえたら嬉しいです。あと私達の生活で身近なものが、いかに計算されてできているのか。そういうのを見つけてもらえたらと思って、舞台美術も四角をいっぱい積もうとしているので、そこも楽しみにしていただけたらと思います。
大川: 劇団白色は『風吹いて、岩転がる』というタイトルです。先ほども言ったように僕の地元が香川県で、そこを舞台にしています。今回、アイホールが閉館になると聞いて、田舎の状況と重ね合わせて創作しています。僕の田舎も人口が減少して、脚本にお祭りの話も出しますが、これもだんだんと失われて活気がなくなっていっています。そういう失われていくもの、なくなっていくものの寂しさのようなものが重なります。ちょっと遠くにある大事なものがなくなっていくことの寂しさや焦りとか、それに向き合った時にどうやって前を向いていくかを描いています。来場された方にそのような感情を共感していただけたら嬉しいなと思います。僕の作風自体がよく私小説的だと言われたりもするので、内容は私的にコンパクトに、けれども空間は広く使って、対比を濃くさせたいです。

浦尻: 僕らの作品の見どころは、リアルな日常だと思ってます。都立千早高等学校さんで実際に上演し、その演劇部の方々が集団創作という形で作ってる劇で、高校生のリアルを描いた作品になります。White Paletteは学生を中心とした劇団であるので、やはりそこにシナジーがあるので、その感覚を生かして、私達だからこそ描ける日常感を見せていきたいと思っています。
若旦那: 等身大の自分達の姿を見て貰えたら成功という感じですね!楽しみにしています。では、増永さんお願いします。
増永: 『『せのび』』という作品は、アイホールに私達が立った日から、半年後の私の家の中の話を書いています。この半年の期間の間に、私たち大学3年生になるんです。就活が始まっている時期で、演劇を学生としてやる終わりもちょっと見えてきます。実は書いているうちに、メンバーの1人が大学を辞めることを決断しました。そこも今、作品に反映しているところです。当たり前だと思っていたものがいなくなったり、変わってしまったりする。アイホールを懐かしいと思って、あそこに戻りたいとも思うけど、戻っていいのかっていう怖さもあるみたいな。半年後に起こり得る葛藤を予想して書いています。
若旦那: 近近近未来へのアクセスですね。「未来」をテーマにということから発想したんですか。
増永: いえ、この企画を見つける前からこのような題材で書きたいと思っていて、本当は別のスペースでの上演も考えていたんですが、アイホールで上演したいと思って他の2人を説得して応募しました。
若旦那: 企画と元々やろうとしていた思いがたまたま合致したんですね。すごいな。では、最後「寿ロータリー」お願いします。

可知: 寿ロータリーの魅力は何と言ってもテーマにあります。日本の食文化を象徴する回転寿司が題材です。いろんなものが効率化・合理化されてきて、回転寿司も今は実際には寿司が回らなくなっていますよね。自分の食べたい寿司が回ってくるのを待つのではなく、注文したら機械が直接人に寿司を届けるみたいな。そういう時代自体に関心を抱いています。合理化していくことをネガティブに捉えるだけではなく、失われつつある人とのつながりや、合理化されていくものたちにどう向き合って、捉えていくかをキャッチーにコミカルに演出していくつもりです。作・演出の蛭田は社会的なメッセージをコミカルに描くのが得意なので、それを皆さんにぜひ見ていただき、一緒に会話ができたらなと思っています。三浦さんも意気込みをどうぞ!
三浦: 今週から稽古が始まりますが、僕は勝手にすごく動くんじゃないかなと予測しております。SFと回転寿司ということで、私は皿になるのか、寿司になるのか、魚になるのかまだわかりませんが、回転できるように体力をつけております(笑)
若旦那: 見どころは、三浦さんがどんなことになってるかってことですか(笑)
三浦: そうですね。どんな人でどんな舞台になるのか。可知さんの言う通りタイトルからいっぱい想像してもらって、こうなったんだというのをぜひ目撃してもらえると嬉しいです。
若旦那:ありがとうございます。ショーケースの良さっていうのは横のつながり。他の団体の上演を見ながら自分たちも出られるってことですよね。自分たちの創作に集中して、他を見る余裕ないよとかもあるかもしれないけど。楽屋とかもきっと一緒になるので、お互いできるだけ見たり音を聞いたりしながら、新しい繋がりを作って「あ、この俳優さんいいなあ。今度出てもらおう」みたいな未来に繋がればいいなと思います。ぜひ皆さん、「アイホール・ショーケースで知り合った人たちで作品を作りました。」なんて言っていただけたら、アイホールの皆さんも喜ぶし、演劇を続けている僕らもとても嬉しいので、自分たちの作品を面白くしながら、みんなで盛り上がって仲良くなってくださいね。
(令和8年2月、オンライン上にて)
[1] アイホールで平成29年度〜令和8年度まで続いた短編戯曲創作のノウハウを学ぶ講座。
[2] 2017年にアイホールが自主製作したアイホールがつくる「伊丹の物語」プロジェクト『さよなら家族』(作・演出ごまのはえ)の台本に改訂を加え、二ットキャップシアター企画・製作で再演された作品。演出はフリーの劇作家・演出家である小原延之が担当。アイホールの閉館決定後の影響も受けた内容に改訂されて上演されたことが話題となった。第4回関西えんげき大賞(2025)最優秀作品賞・観客投票ベストワン賞をW受賞した。
【公演情報】
アイホール・ショーケース
~イタミつながるブタイのミライ~
2026年
<&now>
3月7日(土)・8日(日) 両日とも15:00
<&future>
8月14日(土)・15日(日) 両日とも11:00/15:00
公演詳細






