アイホール・アーカイブス

アイホール・ショーケース~イタミつながるブタイのミライ~
<&now >参加団体座談会インタビューVol.2

 

アイホールでは3月に、主催事業として、「アイホール・ショーケース~イタミつながるブタイのミライ~」を開催します。アイホールの過去・現在・未来を映し出す、短編作品のショーケース公演になります。2週に渡って開催される本企画の1週目はアイホールの今までの事業・講座に関わり今も活動を続けている市民や、受講生を中心とした団体が出演する<&now>。その代表メンバーの座談会を2本に分けてお送りします。今回は第二弾目。聞き手は、本企画のアドバイザーを務める若旦那家康さんです。


★自己紹介と印象に残っているアイホール事業

 

オンラインでの集合写真。左上から時計回りに若旦那家康、渡辺美左子、伊井楓侑花、壱田かいち

若旦那家康(以下、若旦那):今回は<&now> 2本目の座談会ですね。ではまず、簡単な自己紹介からしていただけたらと思います。

 

 

伊井楓侑花(以下、伊井): ブルーバードとネコ代表の伊井楓侑花です。兵庫県立芸術文化観光専門職大学(以下、CAT)の4年生で、ブルーバートとネコも大学の在学生と卒業生で構成している団体です。私自身は伊丹市立松崎中学校と伊丹市立伊丹高校(以下、市高)の演劇部出身で、アイホールには、中学生の時からワークショップやAI・HALL中学高校演劇フェスティバル(以下、アイフェス‼︎)[1]でお世話になっています。

 

壱田かいち(以下、壱田): 劇団温冷兼用代表の壱田かいちです。劇団温冷兼用は2024年に旗揚げ公演をしまして、そこからずっと活動を続けています。私個人としては、伊丹北高校の出身でアイホールさんにはアイフェス‼︎の時からお世話になっていました。あと伊丹想流劇塾(以下、劇塾)にも一年通わせていただきました。今回こうしてショーケースに参加できてとても嬉しいです。

 

渡辺美左子(以下、渡辺): 自分史の会の渡辺美左子です。自分史の会は2018年に、アイホールで開催された土曜日のワークショップ「自分史をセリフにしてみよう」[2](以下、自分史)をきっかけに発足されました。私はその講座の二年目に参加しました。もともとは市高の教員で演劇部の顧問をしていたので、アイホールとは非常に長いお付き合いです。私自身は顧問をしている間も演劇がわからないままだったのですが、アイホールのおかげで部員たちはちゃんと育ってくれました。私が市高を退職した後、すれ違いで伊井さんが演劇部員として入部されました。

 

若旦那: <&now>の方は、今までアイホールの事業に関わっていただいた方たちにお声がけしているので、皆さん経歴を聞くだけで「お世話になりました」っておっしゃられますね(笑)それぞれアイホールに関わった時代や年齢も違うと思いますが、アイホールはどんな印象でしたか。

 

アイフェス‼2021 伊井さん出演の様子

伊井:大きく2つあります。1つは「中学生・高校生のための夏休みの演劇ワークショップ」(以下、夏休みWS)[3]です。初めてアイホールに行ったのが、夏休みWSでした。松崎中学校と西中学校と南中学校の市内3校の演劇部が一緒に参加して、学校関係なくバラバラにグループを作ってプロの演劇人と一緒に演劇を作りました。他校の演劇部と一緒に作品を作ったことももちろんですが、音響・照明機材を使った本格的なワークショップだったので、プロの方々が、自分達のやりたい演出を実現してくださったことが自分にとって良い経験になったと思います。高校はどうしてもコロナ禍で規模が縮小してしまい、思い出がぎゅっと小さくなってしまいましたが、中学生の時の楽しい思い出があったので、高校も市内の演劇部に入ることにしました。もう1つはアイフェス‼︎です。自分は中学生の時は音響や照明のテクニカルを担当していました。他の大会やコンクールでは、なかなか照明のオペレーションまで触る機会が少ないのですが、アイフェス‼︎では、プロの方々が中学生の私達にも対等に接してくれて、実際に自分で機材を触ってオペレーションができたんです。これもとても思い出に残っています。

 

若旦那: 中学校で演劇部をする前は、アイフェス‼︎や夏休みWSのことは知ってたんですか。

 

伊井: 全く知らなかったです。私はもともと運動部に入るつもりだったんですが、仮入部で向いてないなと感じて、他の部活動を探したんです。その時点では演劇部が何をするのかもわからないし、演劇を見たこともありませんでした。姉の友達が演劇部に所属していたこともあって見学した時にアイフェスで上演した台本を読ませてもらって「こんなに本格的なことを中学生でもやってるんや」と知ったのがきっかけで演劇部に入部しました。

 

壱田: 私は、コロナで中止になった高校2年生を除いて2回アイフェス‼︎の舞台に立ちました。

 

若旦那:演劇部がある伊丹市内の高校では、アイフェス‼︎は先輩たちから脈々と受け継がれていくものなんですか。

 

壱田: そうかもしれないですね。ただ、北高は私が入った時には先輩達が大喧嘩して辞めてしまっていて(笑) 1年生4人でもう一回イチからやり直すところから始まりました。

 

若旦那: ええ!? 再結成できてよかったですね。初めてアイフェス‼︎に参加して印象深かったことってありますか?

 

壱田: 当時は、ただただ豪華な照明音響を使ってあの大きい舞台に立たせてもらえて嬉しいなぁっていう思いが強かったです。でも今思い返せば、高校1年生の時に参加した夏休みWSで講師の方がおっしゃっていた「play is play, play is pray(演劇は遊び、演劇は祈り)」っていう言葉が、最近になってやっと意味が分かってきました。

 

若旦那: 演劇に限らずアートって、その時は分からなかったものが、しばらく経ってから意味について気がつくのが面白いですよね。僕もいいなぁと思います。もっと年を取ったらまた別のことに気がつくかもしれないですね!

 

渡辺: 私が印象に残っているのは、演劇部顧問だった当時にアイホールでハイスクールプロデュース(以下、ハイプロ)という劇作家の方が書いた脚本の舞台に高校生が出してもらう公演です。部員の子たちが舞台に立つ姿を見て、高校生っていい教えを受けたら自分達の力でどんどん成長するんだっていうことを知りました。だからもう完全に演劇のことはアイホールと自分たちで成長する力に任せていました(笑)

 

若旦那: 演劇部の顧問になって、ハイスクールプロデュースを知って、自分でもやってみたくなったのですか。

 

渡辺:アイフェス‼︎は毎年部員たちは参加してくれていたので、それは見ていましたが、自分史を受講したのは、退職してからなんです。

 

若旦那: 先生ってよく、自分もやっていたから演劇部の顧問になったりする流れもあると思うんですけど、逆に先生を退職されてから始められるってすごいですね。

 

渡辺: アイホールがあったおかげですね。高校生の力には到底及ばないと教員の頃は思っていたけど、ずっとあんなふうに舞台で活躍できていいなあっていうのを羨ましく思ってもいました。退職してから、一人でできることとして、紙芝居に取り組んでいます。それも演劇部の顧問をしていた影響があると思います。自分史を受講したのも、アイホールに勤めている卒業生の子が案内してくれたことがきっかけです。アイホールに関係している卒業生がいっぱいいるんですよ。

 

若旦那:地元密着ですね!

 

★アイホールで出会った人とのつながり

 

若旦那:伊井さんはアイホールでの経験を踏まえて、CATの先輩や先生たちに繋がりを広めていっていますね。

 

伊井: 大学入試の面接や入学後最初の自己紹介でもアイホールのことを話していました。アイホールの存廃問題があった時がちょうど受験期だったこともあり、演劇教育や劇場の運営、芸術文化のまちづくりなど、公共の事を学びたいという思いが強かったです。今、自分の地元のホールがそういう状況にあるということを知ってほしくて、学生だけでなく、先生方にもアイホールの事を相談したり、魅力を伝えに行ったりしていました。また、<&future>に実はCATの先輩方が主催している「寿ロータリー」という団体が出演します。団体一覧を見た時に知って、繋がれてうれしいなって思っています。

 

若旦那: 壱田さんはアイホールを通して繋がっている人はいますか?

 

アイフェス‼2021 壱田さん出演の様子

壱田: アイホール関連で今も繋がっている方は伊井さんくらいですが、劇団温冷兼用には同じ高校出身の子がいて、今も一緒に舞台に立っています。卒業後にアイフェス‼︎のスタッフとして呼んでいただいたりもしていました。

 

伊井:<&now>の他の団体では、「トネリコ音楽隊」の米沢さんともつながりがあります。私が高校1年生の時に、演劇部の部員が私1人になったので、その時に渡辺先生と米沢さんが気にかけてくださって、とてもお世話になりました。

 

渡辺: 私は「ルイボスティーはバニラの味」の石﨑さんです。アイホールの『ビューティフル・サンデー』という公演で、自分史の会も関わらせてもらいました。

 

若旦那: 壱田さんは劇塾にも通っていましたけど、劇塾の時の同期の方と付き合いは続いていたりするんですか?

 

壱田: 「わ!古典」の町田さんと、<&future>の劇団白色の代表の大川さんが劇塾の同期でした。同じショーケースに立てて嬉しいなあっていうのはありますね。

 

若旦那: 大川さんたちが腕を上げてるのか、どうか見に行かないといけないね(笑)劇塾の読み合わせ会で、大川さんの作品は歌を使っていておもしろいことするなぁって思った記憶があります。

 

壱田:お二人とも劇塾時代からすごい方だったのでどう変化しているのか楽しみです。私の作品は今の方が面白いです(笑)

 

若旦那: すごく楽しみです!

 

 

★団体名について

若旦那: 団体名がみなさん個性的ですね。自分史の会はイメージがつくんですけど、劇団温冷兼用とブルーバードとネコはどんな経緯で劇団名をつけましたか?

 

壱田: 温冷兼用は、実は全然意味はないです。名前つけようという時に何も思いつかず、みんなで煮詰まっていた時に部員の一人が「温冷兼用」と書いているペットボトルを持っていて「もうこれでいいよ」ってなりました(笑)作風が熱く盛り上がっている時と、一気にドンと落とす時の差が激しいようで「劇団名らしく温冷兼用ですね」って言われることも多いです(笑)

 

若旦那: みんなうまいこと言いたいんだな(笑)ブルーバードとネコはなぜこの名前なんでしょうか。

 

伊井: ブルーバードとネコは今回限りの団体なので、とても悩みました。先ほど夏休みWSの話をしましたが、中学1年生の時のWSがとても楽しくて。そのWSで取り扱った作品が『青い鳥』でした。この企画に参加するなら、アイホールの思い出を取り入れたく「青い鳥=ブルーバード」にしました。「ネコ」は芸術文化観光専門職大学の略称が「CAT」って言うんです。学内では推奨されてませんが、学生の間で「ネコ/キャット」という呼び方をすることもあります。アイホールの思い出に大学名を合わせた形で作りました。

 

若旦那: 伊丹から大学まで繋げたのか。まだ20代だと思いますが、もうすでに自分史ができてますね。団体の名前の由来を聞いてみるの、好きなんです。そのわりには前回の座談会では緊張して聞けなかったんですけど(笑)

 

 

★出演者など団体のメンバーについて

若旦那:出演者はどういう構成ですか。劇団温冷兼用は出演者全員、劇団員でしょうか。

 

劇団温冷兼用 提供公演写真

壱田: 全員劇団員です。最近の公演では、客演も呼んで上演しましたが、今回はせっかく思い入れのあるホールやし、小さくても劇団員でやろうよという話になりました。

 

若旦那:等身大の力で行こうっていう感じですね。自分史の会はどういうメンバーですか?

 

渡辺: 自分史の会のメンバーだけで演じるにはどうしても人が足りなくて、外部からも仲間を募りました。『ビューティフル・サンデー』で繋がりのできた井田紋乃さんや演出の小原さんの奥様の田矢雅美さん、また、小原さんが講師をしておられる高槻市のシニア劇団「千年団」の劇団員など、小原さんのつながりで協力してくださる方にお声がけして参加いただいています。

 

伊井: 私たちは、メンバー8人で、CATの学生と卒業生で構成されています。卒業生は1人だけなんですけれど、その方が伊丹市出身の先輩でして。

 

若旦那: えぇー!

 

伊井: 私がCATを志望したいと思った時に、別の高校の同級生が「高校の先輩がCATに1期生として入るよ」と教えてくれたんです。ちょうどその先輩がアイフェスを見に来ていたので、「私もCATに行きたくて!」という話をして、入試情報のことなどいろいろ教えてもらいました。大学入学後は、関わりはありつつも一緒に演劇を作ることはできなくて。今回ショーケースのお話をいただいた時に、あの先輩と絶対やりたいと思って、「一緒にやってくれませんか?」と声をかけました。個人的にはその点に特に熱い思いがあります。脚本・演出を担当してくれる高橋詩絵里(以下、高橋)は、「作・演出をずっとやりたい」と言ってたけどなかなか実現できなかったんです。それを知っていたので「よかったら最後に一緒にやってみない?」と誘いました。他にも、在学中にやり残したことがある学生や、前々から一緒にやりたいと思っていた学生に声をかけました(笑)

 

若旦那: 面白いですね。伊井さんのラブコールの力がすごいです!誘われた先輩も嬉しいでしょうね。他の劇団の作品を見て交流して知り合ってくれたりしたら、今後も広がっていきますよね。アイフェス‼︎とかハイプロで、先輩後輩とか縦の繋がりはあると思いますけど、これを機会に横のつながりとして知り合っていけると最高ですね。

 

★作品のみどころについて

若旦那: ここまで読んでくださった方は、皆さんのことを「なるほど、こういう人達か」と人柄も、分かってきたと思うので、次は今回の作品の見どころについて聞いていきます。

 

「自分史の会」稽古の様子

渡辺: 自分史の会は『オスミサンと六人の子供たち』という作品をリーディング劇として上演します。自分史の会のメンバーで76歳の今も現役で教員を務められている岡本壽美子さん(以下、オスミサン)という方が自分の半生を元に台本を執筆しました。六人の子供達と聞くだけでもご苦労があったと思うのですが、そのうちの四人が不登校を経験されています。40歳で教員になり、子どもたちの自立に向けて頑張ってこられたオスミサンの熱意がきっと伝わると思いますので、楽しんで見ていただけたらと思っています。

 

 

 

 

劇団温冷兼用 提供公演写真

壱田: 劇団温冷兼用は『ボールプールアンドヒーロー』という作品を上演します。これは、劇団の前身である甲南女子大学の演劇部「劇団Ortensia」に在籍していた時に上演した作品です。舞台上にボールプールを作るんですよ。アイホールに呼んでもらえて、しかも最後だから、なんでもしてやれ!という思いで、できること全部してアイホールに「ありがとう」と言いたいなと、できるだけ派手派手にできるものを用意しました。もともとの上演が2時間あったので、それをぎゅっとして前より面白くなっていると思います。とにかく元気にやって「よろしくね」と未来に繋げられたらと思います。

 

 

 

 

ブルーバードとネコ メンバー写真

伊井: ブルーバードとネコは『青空をのみこんで』という作品を上演します。劇作の高橋も私と同じ大学4年生で、去年の夏ぐらいから構想を練っていました。ショーケースのテーマが「未来」だったので、自分達の未来を考えた時に、ちょうど就活中だったこともあり就活と友達関係を繋ぎ合わせた作品にしました。アイホールの、お客さんと舞台の近い距離感とか声のクリアさが生かされるように、自然な会話で繋げていく話になっています。高橋が、ポジティブな終わり方にできるように、見てくださる人達にお守りになるような言葉とかセリフを残していけるような作品にしていきたいと言っています。高橋自体が独特な世界観を持っているので、そういった自然な空間作りとか言葉の掛け合いとかをうまく表現していけたらなと思っています。

 

若旦那: 3団体とも見終わった後に全部あったかい気持ちになれそうです。

 

★アイホール閉館についての想い

 

壱田: アイホールの元職員に伊丹北高校の演劇部の先輩がいらっしゃったんです。その方が「今までアイホールで、学生に演劇を続けていってもらうための種まきをしてきたつもりだけど、これからどう芽吹くかな」という話をされていました。その先輩を含めてアイホールの皆さんに「まいた種、ここに芽吹きましたよ」っていうのを見せられたらと思っています。

 

若旦那: おお!芽吹いてくださいね。まだまだ成長して大きくもなるし、僕もせっかくここで知り合えたので、その後も楽しみにしています。

 

伊井: 今回、作品としてもチームとしても結構チャレンジングで、今でも上演出来るかドキドキしながら稽古を進めています。私としてはアイホールが3月末で閉館してしまうっていう実感がまだない状態で本番を迎えると思います。中学生の時、初めて照明を担当して、そのままアイフェス‼︎でも照明をやらせてもらいました。今回のショーケースでも代表としてどんな立場でも選べたんですが、その中であえて照明を選びました。こだわった照明はしないんですけど、中学生の時の自分の気持ちとかを思い出しながら照明を操作したいと思っています。

 

渡辺: 本当に、あのアイホールの素晴らしい舞台が使えなくなるのは惜しいですよね。高校生がアイホールで成長していく姿を直に見させていただいていましたし、アイホールを通じて再会できる仲間もいて、本当にありがたい場所だったなあと思っています。

 

若旦那: ありがとうございます。これからもアイホールのことを語り継いでいきたいですし、そういう機会があったらまた座談会をやってみたいですね。すごく楽しみにしています。

 

(令和8年2月 オンライン上にて)

 

[1] 市内の中学・高校演劇部の活動の1年の集大成としてアイホールのイベントホールの機構を思いっきり利用して上演してもらう公演事業。

[2] 令和元年度〜2年度に開催した講座。講師は劇作家の小原延之。自分の歴史=自分史を題材に短編の戯曲執筆を目指した。

[3] 市内の中学・高校演劇部のためにアイホールで開催していた演劇ワークショップ。イベントホールを使って演劇を創作する体験ができた。


【公演情報】

アイホール・ショーケース
~イタミつながるブタイのミライ~
2026年
<&now>
3月7日(土)・8日(日) 両日とも15:00
<&future>
8月14日(土)・15日(日) 両日とも11:00/15:00
公演詳細