■作・演出/北村 想
■出演/蟷螂 襲(PM/飛ぶ教室)、片岡 百萬両(ミジンコターボ)、船戸 香里


 本作は、北村想が清流劇場に書き下ろし、2004年に初演され好評を博した作品。『幕末太陽伝』などで有名な映画監督・川島雄三をモデルにした情感溢れる三人芝居です。映画を題材にしながらも、北村想の「太宰治論」としても解釈できる“文芸”作品であり、作者曰く「女性を描いた唯一の戯曲」でもあります。初演時、冬であった季節設定を変更し、夏バージョンとして上演します。


 タイトルの『この恋や思いきるべきさくらんぼ』は川島雄三監督の俳句だが、もちろん、川島(作中で貸間という名前になっているのは川島監督の作品『貸間あり』からとられている)雄三は、そのとき、恋をしていたのに違いない。そうして誰しもが経験するように、その恋には逡巡(ためらい)があった。この場合の川島雄三のためらいは、恋する相手が人妻だとか、友人の恋人だとか、というふうな、なさぬ仲だったということではナイ。川島自身の背負っていた宿痾(治りそうもなく、宿命のごとく罹患者を苦しめる業病)と、結婚生活などという、ごくふつうの庶民大衆の日常がおくれそうにナイ孤独な性格と、映画監督という明日も知れない不安定な職業からくるものだ。
 川島は、その恋の行く末を夢想しながら目の前のさくらんぼをみつめている。あるいは、さくらんぼは彼の創作で、そこにさくらんぼが在ったかのように描いている。この場合のさくらんぼは、ひとつの象徴として季語になっている。枝が分かれて二つ、実をつけているからだ。川島は、あたかもそのさくらんぼに問いかけるようにしている。「べき」は、「思いきる」に対して、推量の「だろう」、意志としての「しよう」、可能「できる」、当然のこと、命令「せよ」の、何れにもとれる。その中で川島はゆれ動いているのだ。
 私は、作品においてこの「さくらんぼ」にもうひとつ、意味づけをしてみた。それがこのドラマのドラマたるところになっている。「さくらんぼ」は、いわゆる「桜桃」だ。そこで、もうひとつ、「べき」の意味が加わってくるという趣向になっている。

北村想


■日時
平成24年9月 21日(金)  19:00
22日(土) 14:00/19:00★
23日(日) 14:00

※受付開始:開演60分前。開場:開演30分前。
★終演後、深津篤史さん(桃園会/劇作家、演出家)をお招きして、シアタートークを開催します。

■チケット

一 般/前売=3,000円  当日=3,300円
学生&ユース(25才以下)/前売=2,000円 当日=2,300円
【日時指定・全席自由】
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。

■チケット取扱い

チケット発売中
・アイホール(予約のみ)
 TEL:072-782-2000
 メール:info@aihall.com
・Confetti(カンフェティ)
 TEL:012-240-540(平日10:00~18:00)
 WEB:http://confetti-web.com/

■スタッフ

舞台監督 / 河村都、舞台美術 / 西田聖、照明 / 葛西健一、
音楽 / ノノヤママナコ、音響 / 今里愛、衣装 / 福田尚子、演出助手 / 高橋恵
写真撮影 / 石川隆三

■お問い合わせ

アイホール Tel:072-782-2000  メール:info@aihall.com Twitter:@ai_hall


■あらすじ
 映画監督、川島雄三と、作家太宰治が、ひとりの女性をめぐって恋のライバルどうしだったことは誰も知らない。 もちろん、何れの評伝や年譜にも出てこない。事実ではナイからだ。けだし、戯曲は、ほんとのような虚構を扱う。 いま、ある夏の昼下がり、旅館のはなれで映画監督の貸間と助監督の下手村は、次作のシナリオ執筆の仕事に入っている。 入っているが仕事はいっこうにすすまない。題材は決まっている。太宰治作品の何かを映画化すればイイ。 ここに次作のヒロインに抜擢された新人女優が乗り込んでくる(つまり強引にやってくる)。 この新人女優こそが、貸間と太宰の命運を分けた女性の関係者なのだ。貸間は、その新人女優と対峙する。 ひとは、みな運命の子でしかナイ。それを深く胸に刻むように新人女優は屹立する。ただただ、貸間の心には、時雨が降りそそぐ。 などという、真面目な芝居がほとんど、ふざけながら演じられることになる。



蟷螂襲(とうろう・しゅう)
 兵庫県出身。俳優、劇作家、演出家。「PM/飛ぶ教室」座長。満開座、笑殺軍団リリパットアーミーを経て、1994年にPM/飛ぶ教室を旗揚げ。1998年、『滝の茶屋のおじちゃん』で第5回OMS戯曲賞受賞。

片岡百萬両(かたかお・ひゃくまんりょう)
 兵庫県出身。俳優、演出家。西田シャトナー主宰の群像劇団「LOVE THE WORLD」を経て、2003年に劇団「ミジンコターボ」を結成。俳優、脚本、演出、宣伝美術などを担当。俳優として関西を拠点に多くの外部出演をこなす。

船戸香里(ふなと・かおり)
 兵庫県出身。俳優。1997年アイホール演劇ファクトリー1期生として参加。2000年~'09年まで清流劇場に所属、以降フリーとなる。代表作は、AI・HALL+北村想プロデュース MONO語り『怪人二十面相・伝』。'06年より大阪女優の会に参加。


主催:公益財団法人伊丹市文化振興財団・伊丹市
企画製作:アイホール
初演:清流劇場(演出:田中孝弥) 2004年2月
著作権認可番号 ©So kitamura2012 No.15 小堀純事務所