竹内銃一郎/Juichiro Takeuchi


劇作家・演出家 1947年生まれ。愛知県出身。
早稲田大学在学中に映画監督・大和屋竺に師事。75年、木場勝己、沢田情児らと劇団「斜光社」を結成し、『檸檬』『SF大畳談』『悲惨な戦争』などを発表。暴力にあふれた世界を乾いた笑いと知的なスタイルで描く作風で注目を集めた。80年に劇団「秘法零番館」結成、『あの大鴉、さえも』で第25回岸田國士戯曲賞を受賞。俳優・佐野史郎と共にユニット「JIS企画」を結成し96年に『月ノ光』で読売文学賞(戯曲・シナリオ賞)と第30回紀伊國屋演劇賞個人賞を、また同年『坂の上の家』『氷の涯』他で読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。98年、『今宵かぎりは…』『風立ちぬ』で第49回芸術選奨文部大臣賞を受賞。2004年には紫綬褒章を受章。2000年に近畿大学文芸学部教授に就任。後進の育成に力を注ぐとともに、08年には学生たちと「DRY BONES」を結成し創作活動を継続。14年3月に退職し、現在は京都に居を構える。


『檸檬』  
初演:斜光社(1978年)


梶井基次郎の短編小説『檸檬』に着想を得た作品。反権力闘争から脱け出して信用金庫に勤務するかつての闘士と、闘争現場を共にした幼なじみの刑事を軸に、転向者の葛藤を徹底したコミカルさで描いた黒い喜劇。


写真/初演より
[演出:和田史朗 左より、嬢沙菜恵、小出修士、矢島瞳、山口鋭]


『悲惨な戦争』
初演:斜光社(1979年)


ごく普通の家族の食卓が戦場へと化す条理なき日常。見えない敵に宣戦布告した家族の“タタカイ”を通して、当時の日本の社会が抱える共同幻想の悲惨な状況を暴き出した。


写真/初演より 
[演出:和田史朗 左より、沢田情児、木場勝己、小出修士、嬢沙菜恵]


『あの大鴉、さえも』
初演:秘法零番館(1980年)


秘法零番館旗揚げ公演。第25回岸田國士戯曲賞受賞作。タイトルは、現代美術家マルセル・デュシャンの有名なオブジェ『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』からの引用。一枚の透明な大ガラスを運ぶ三人の男たちのブラックユーモア溢れるナンセンス芝居。


写真/初演より 
[演出:竹内銃一郎 左より、森川隆一、小出修士、木場勝己]


『みず色の空、そら色の水』
初演:東京乾電池(1993年)


劇団東京乾電池の若手とタッグを組んだ作品。高校演劇部の夏合宿で訪れた海辺の別荘を舞台に、チェーホフの『三人姉妹』の上演に向け準備をする部員たちのひと夏の物語。96年にはAI・HALLプロデュースとして、総勢22名の全キャストをオーディションで選出し伊丹版として上演。


写真/AI・HALLプロデュースVol.6(1996年) 
チラシ/初演時
[演出:竹内銃一郎 関西弁翻訳:岩崎正裕]


『坂の上の家』 
第1回OMSプロデュース(1995年)


第1回OMS戯曲賞受賞作を、扇町ミュージアムスクエアのプロデュースによって上演。父母を亡くした三兄妹のなにげない日常を長崎弁で描いた松田正隆の秀作を、俳優たちの生き生きとした演技による緊密な劇として立ち上げた。第3回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞作。


写真/OMSプロデュース公演より
[作:松田正隆 演出:竹内銃一郎 左より、小田豊、奇異保、洪仁順、水沼健]
写真撮影/谷古宇正彦


『月ノ光』
初演:JIS企画(1995年)


俳優・佐野史郎と組んだユニット「JIS企画」での上演。1919年夏のプラハを舞台に、不連続殺人事件の謎解きと、男女6人の息詰まる愛憎劇を描いた本格ミステリー。読売文学賞(戯曲・シナリオ賞)と第30回紀伊國屋演劇賞個人賞をダブル受賞。


写真/再演(2000年)より 
[演出:竹内銃一郎 左より、佐野史郎、岡本健一]
写真提供/森崎事務所


『今宵かぎりは…1928超巴里丼主義宣伝の夜』
初演:新国立劇場(1998年)


1920年代に渡仏した藤田嗣治・佐伯祐三・金子光晴など実在の芸術家たちをモデルに、パリの日本人たちの青春群像を詩情豊かに描いた作品。初演は、新国立劇場の企画製作で栗山民也の演出。同年上演の東京乾電池『風立ちぬ』とともに、第49回芸術選奨文部大臣賞を受賞。


写真/JIS企画公演(2002年) 
[演出:竹内銃一郎 左より、佐野史郎、加納幸和、清水真実、岡本健一、中川安奈]
写真提供/森崎事務所


『心臓破り 手品師の恋』
初演:DRY BONES(2011年)


教鞭をとった近畿大学の学生たちと結成した「DRY BONES(ドライ・ボーンズ)」(2008〜13年)に書きおろした作品。宮澤賢治の『風の又三郎』を換骨奪胎し、某地方大学の奇術研究会部室を舞台に繰り広げられる青春学園ドラマ。


写真/初演より
[演出:竹内銃一郎 左より、砂川奈穂、保]
写真撮影/清水美佐子


『満ちる』
初演:MODE(2012年)


こまつ座の常連俳優だった、すまけいを主演に迎えたMODEに書き下ろした作品。生涯最後の映画を撮ろうとしている「鬼才」と呼ばれた老映画監督。脚本家である娘との親子の確執を軸に、映画づくりの現場に集まる人々の「関係」と「事情」が織りなす物語。


写真/初演より
[演出:松本修 左より、小島尚樹、すまけい、若松力、中田春介]
写真撮影/益永葉