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鼎談 はしぐちしん×横山拓也×山口茜 (後編)

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今秋上演の作品についてお話いただいた前編はこちら


■それぞれの作品のこと

三人1横山:僕は『ブラックホールのそこ』の戯曲を読ませていただいたのですが、短編三本を並べることで新たな風景をつくりだしている手法といい、今までのはしぐち作品よりもリアリズムが強い印象があります。山口さんの『つきのないよる』も初演を拝見しているのですが、ケレン味もあって生演奏もあって、俳優がイキイキとしていたのが印象的で、エンターテインメントな作品で本当に面白かった。今回、あんなに面白かったものが、さらにどんなに変化が起きるのだろうと楽しみです。

 

山口:はあ…落ち込む…。

 

岩崎:なんでなんで(笑)

 

山口:いや~、何を喋っても判りづらくなりそうで(笑)

 

岩崎:一般論だけど、男って、どう差し出すかをものすごく考えるけど、女性って感覚的にお話になられることが多いと思う。今の山口さんは、横山君の論理的な語り口に対して、そのまんまでは返せないってことだよね。

 

山口2山口:よく大阪のおばちゃんが喫茶店でどんどん話が変わっていったり、平気で車の往来の真ん中を渡ったりするって言いますけど、私、まさにそれなんです。ある男性が母親からのLINEを「わけが判らんこと書いている」って見せてくれたんですけど、私には全部判るんですよ、感覚というか…うーん、やっぱり喋れなくなってますね。

 

横山:その言葉にしにくい感覚を戯曲に起こしている作業ってすごく興味深いですよ。だって言葉にしているんですから。

 

山口:いや、できてないですよ。この作品も戯曲だけ読むと判りにくい話なんです。ただ、キャストにかなり助けてもらって観やすくなった。

 

はしぐち:僕は『つきのないよる』に俳優として出演しましたけど、稽古場では、俳優全員がこれはこう思うとか、そこまであからさまにしなくてもいいんじゃないかとか、論理的にこうしたほうが納まるんじゃないかとか、そんなことをそれぞれがワッと言って、それを茜さんが現場で選んでいくという創り方でしたね。

 

岩崎:逆にいうと、俳優がそれだけ興味を持てる戯曲ってことだよね。ひとつの解釈にしか読みようがない台詞は、俳優にとってはつまらないと思うけど、この戯曲はそうじゃないってことだよ。

 

はしぐち:自由にとれる、誤読の幅が広い戯曲だったので、面白かったです。

 

山口:しんさんは、なんか漂ってますよね。私と横山さんが両極端だとすると、その間を(笑)

 

 

■戯曲の創作方法について

全体2山口:台本をみなさんがどうやって書いているのか、すごく興味があります。まず最初に何をするんですか?

 

岩崎:コンセプトを決めるんじゃない? 山口さんと同じくこれが気になる、ひっかかるというのを見つけて、これをどうやったら演劇にできるかを考える。

 

山口:じゃあ、そのあとは何をされるんですか。そこからどうするんですか?

 

横山:わー、難しい!!

 

山口:私、今まで、その時点で書き始めていたんです…。

 

岩崎:僕も20代のときはそうだったよ。

 

山口:それでも、あんな筋道の通った話になるんですか。

 

岩崎:いやいや、その昔は、関西屈指の“わかりにくい”劇作家だったんですよ、僕(笑)

 

山口:え、そうなんですか?

 

岩崎:論理性なんかいらないと思っていたし、そういう書き方が正しいと思っていた。90年代以降は会話劇を書くようになりましたけど、それ以前は、ストレートプレイは恥ずかしいという時期があったんです。80年代の話ですよ。何だか判らないものを、やみくもに追い求めようとしていました。だから、当時は、思いついたら直感的にわーっと書き出して、でも最後までたどり着けなくて苦しんだり、わけが判らないと言われてお客さんが減っていったり。そんなことを経験して、今日に至っています(笑)

 

横山3横山:僕は、今よりもっと、ストーリーに寄っていた時期があって、そのころはプロットをたてて書いていました。人物をたてて、場所を決めて、状況を揃えてと、このやり方は今も続いていますが。あと、普段から言葉拾いとかメモを集めておいて、何と何が結合するかを考えています。本当はもっと直感を信じて書きたいんですが、やっぱり、自分のそういう部分は信じられなくて。これ、ずっとコンプレックスでもあるんです。まあ、それぞれ無いものねだりでもあるんでしょうね。

 

山口:確かに(笑)

 

岩崎:はしぐちさんは、もともと俳優が先で、劇作が後ですよね?

 

はしぐち:どこまで遡るかにもよりますが、そもそもは書きたいので大学の演劇部に入りました。映画も撮りたい、ディレクションもしたいという思惑からの演劇だった。だから、読むのも好きだし、観るのも好きです。僕も言葉拾いやメモはよくします。あと、小説を読んで気に入った箇所に付箋を貼って、あとで全部書き写すという作業も継続的にやっています。だから、興味のあるものを演劇に立ち上げるなら…という初動は一緒です。その興味から派生して、色んな本を読んで、重なることを探していく感じです。今回はその重なりが偶然にもたくさんあって…。例えはしぐち2ば、『パワー・オブ・テン』という短編映画。カメラを、1m四方からスタートして、だんだん引いていく映画ですが、10の一乗で10m上空、10の20数乗でもう宇宙で真っ暗闇という(笑)。これを演劇で、例えばGoogleアースみたいにお客さんの視点を持っていくにはどうすればいいかを考えていると、太田省吾さんの言葉でぴたっとくる言葉に出会ったりする。で、その言葉をスポッと台詞にいれて引用してみる。そんなツギハギでつくっています。プロットとかうまくできないので、ワンシーンを書いて、また次のシーンを書いて、それをどう繋ぎ合わせるかを考えて、整合性がとれないところを変えてと、特に今回はそういうやり方で仕上げました。

 

岩崎:山口さんはどう書いているの?

 

山口:今回はくるみざわさんがいてくださるので大丈夫なのですが、いつもは、書きたいことが出てきても、それをどうまとめていいのかが判らなくて、とっちらかります。紙に書き出したりしても、まとめかたが判らず、箱書きすらできなくて…。なんかモヤッとするんです。

 

岩崎:箱書きはしちゃいけない、みたいな?

 

山口:したいんですけど、できないんです。複数人の会話で、自分以外の人の考えを書くことも、どうすればいいかが判らない。

 

岩崎:演劇では対話がベースだから、ある人の主義主張と異なる意見も書かなくてはいけないときがあるよね。

 

山口:それを自分を通してしか書けなくて…。男女の会話も、全部、私の視点からしか書けなくて、みんなどうやってそのことから逃れているんだろうって…。

 

岩崎:いや、逃れられていないよ(笑)

 

はしぐち:僕、今回、俳優に言われましたもの。「これ、全部、しんさん、ですよね」って。「台詞のあっちこっちにしんさんが顔出してきますよ」って(笑)

 

岩崎&山口2岩崎:じゃあ、山口さんは演出のときはどうしているの? 俳優がやったあとなんて言っているの? 

 

山口:違和感を言葉にするために何度かやってもらいます。私の言葉で喋っても伝わらないので、動きを具体的に指定する以外に今は方法がないです。例えば、演出のダメだしで感情の話をするのはタブーとか言われますけど、もうそんなこと言ってられない状況になって、結局、最後は到達したいところまで持っていくためにタブーも使いまくります。

 

横山:上田一軒さんは、論理的に演出をするタイプで、うまくいかないときはその人にどういう作用を起こさせたいのか、俳優の目的を変えさせています。だから、演技の指示は無いけど、どういう目的を達成するのかで稽古が進んでいる気がします、うちの現場は。

 

岩崎:俳優と喋って、なぜうまくいかないのかを一緒に洗い出す作業をしないと、こっちが創り上げてほしい世界にいかないときはありますよ。

 

山口:ただ、もしかしたら、私が創りたい世界を私自身がわかっていない可能性があります。到達点も見えていなくて、それより、俳優との作業のなかで、違う世界が見えてきた方がいいと思っているふしがあるのかもしれません。

 

 

■これからの活動について

全体3岩崎:ご自身のユニットの活動について、これからどう発展させていきたいですか?

 

はしぐち:コンブリ団は、来年、僕以外の劇作家の作品を上演したいと思っていて、今回とはまた違ったことをやる予定です。ただ、今作は茜さんの『つきのないよる』のように、方向性が変わるきっかけになるのではと思います。コンブリ団結成11年目にして、集団のあり方や作品づくりも含めて、変えていかなければいけないと感じていますので、いつもと違う大きな空間でやることで、ぐっと舵を切り替えるヒントが見つかればと思っています。

 

横山:僕は、iakuの立ち上げ当初から、再演に耐えうるもの、何度もの上演に耐えうる作品づくりをしてきたつもりです。今回、2年ぶりの新作で、これも今後のiakuのレパートリーのひとつになるように、今からどんどん温めていきたいです。戯曲にいろんな視点を取り入れるのもそういう目的があるので、強い作品になるよう、粘っていこうと思います。

 

山口:演劇をやり続けることに、今、ちょっと疲れています。あ、やめないですよ。トリコ・Aは私一人のプロデュースなので今まで通り進めていきますが、そうではなく、固定の俳優メンバーで、劇団みたいなかたちで創作を始めてみたいとも、実は思っています。

 

一同:(驚いて)おおー。

 

横山:そこにいく気持ち、ちょっとわかります。僕は劇団をやめてまだ時間が経ってないので、簡単に舵を切れないですけど、やっぱり自分の劇団で、同じ人とじっくり作品創りをやっていきたいという思いはあります。

 

三人6山口:もともと劇団をやっていて、それを解消して、でもやっぱりそう思うってすごいですね。

 

横山:どこかで集団に戻りたくなるのかもしれないです。

 

山口:憧れますよね。

 

はしぐち:今、三人とも一人プロデュースのかたちをとっているから、そういうのは、確かに憧れますよね。もしかしたら、パートナー的な人でもいいのかもしれないですよ。共同で創っていくような関係性の。二人になった時から集団になるからね。

 (2015年9月 アイホールにて)


コンブリ団『ブラックホールのそこ』 10月2日(金)~4日(日) 詳細

トリコ・A『つきのないよる』 10月30日(金)~11月2日(月) 詳細

iaku『walk in closet』 11月13日(金)~16日(月) 詳細

 

土曜日のワークショップ『ストレッチ・エクササイズ』

令和7年9月13日(土)~12月6日(土)

令和7年
9月13日(土)
10月18日(土)
11月8日(土)

12月6日(土)
各回10:00~12:00 ≪全4回≫ 

ストレッチ


ゆっくり時間をかけながら、身体の内側の筋肉や関節を丁寧に解きほぐしてゆくエクササイズです。腰を起点に、背骨から頭、指先への連続したつながりを感じながら、身体の歪みを整えてゆきます。
ふだん慣れ親しんでいるご自分の身体をあらためて、みつめてみませんか。


会場/
東リ いたみホール 大和室(4階)
(伊丹市宮ノ前1-1-3 )

対象/
中学生以上

定員/
18名程度(先着順) 

受講料/
全回受講:4,000円
※初回時納入。一旦納入した受講料は返金できません。ご了承ください。
1回ずつの単発受講:1,200円 

持ち物/
・バスタオルもしくはヨガマット(床に寝転ぶ際に使用)
・靴下
※更衣室はございませんので、動きやすい服装でおこしください。


主催/公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団、伊丹市
企画製作/伊丹市立演劇ホール

平成27年度現代演劇レトロスペクティヴ
蟷螂襲(PM/飛ぶ教室)×笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー)  対談

出席者
蟷螂襲(PM/飛ぶ教室):『とりあえず、ボレロ』 (作・清水邦夫)演出
笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー):『阿部定の犬』(作・佐藤信)演出
司会:岩崎正裕(アイホールディレクター)

 

※公演詳細は 現代演劇レトロスペクティヴ特設サイト をご覧ください。

 

岩崎正裕(以下、岩崎):平成21年からスタートした現代演劇レトロスペクティヴも今年で6年目になりました。今年度は蟷螂襲のPM/飛ぶ教室さんと笠井友仁のエイチエムピー・シアターカンパニーさんにご登場いただきます。 今まで作品のラインナップは「不条理」や「60年代」など、毎年テーマを掲げて決めてまいりましたが、今回は「戯曲と関西の演出家との出会いの場を提供する」という企画の本質に立ち戻りまして、アイホールが「清水邦夫」・「佐藤信」というオーダーを両演出家に出して、今回の作品を選んでいただきました。作者の清水邦夫さんと佐藤信さんは同時代の演劇人でありますので、共通項もあるのではないかと思います。 笠井さんは稽古を始めていますか? 歌と音楽がありますからけっこう時間かかるでしょう。

 

 

笠井友仁(以下、笠井):5月の上旬から週に1回くらいのペースで始まって、6月から本格的に稽古が始まります。今は読み合わせと身体、歌の練習をしています。作品と対して現在我々が居る位置を探り、2ヶ月後の本番に照準を合わせる、という段階ですね。

 

岩崎:蟷螂さんは7月3日が初日ですので、そろそろ作品の輪郭などが見えている頃だと思いますが?

 

蟷螂襲(以下、蟷螂):ようやく稽古らしくなってきました。現状は20歳前後の若い俳優たちが知らない「昭和」を、昭和生まれの俺たちがまず稽古場から見せなきゃいけないなと思っています。俺が生まれた昭和33年は戦後から13年しか経っていなかったけど、若い頃は「敗戦」がすごく前だと感じていた。でも13年なんてあっという間だな、と最近とみに思う。今年が阪神大震災から20年経ってることを考えたら、10年、20年なんて…と、若い人たちとはそういう話もしています。けっこう面白いですよ。

 

 

手強い戯曲

 

岩崎:蟷螂さんは清水邦夫さんの戯曲を「手強い」とよく仰ってますが、どの辺りが手強いですか?

 

蟷螂:文体というか、口調というかリズムというか、清水さんの“癖”ですね。誰にでもあるんですけど。岩崎さんにもあるし、俺にもずいぶんある。その癖を取り払うのではなく「これはどういう癖、何を見込んでの仕掛けなんだろう」をみんなで共有したいんです。今回の座組は俺が56歳で、いちばん若い子で18歳。それくらいの年齢差がある中でも、作品についての距離は似たようなものだというところから入りたいしね。

 

岩崎:清水さんの台詞は独特な語り口だから、完全な口語じゃないですよね。

 

蟷螂:台詞の「硬さ」というのが清水さんの硬さなのか、その当時の演劇の口調だったのか迷いますね。「てにをは」も含めてすごく丁寧だったりするし。標準語で書かれているのですが、勝手に自分たちで関西弁に翻訳したりしながら、意味合いを探ったりしてます。

 

岩崎:笠井さんの座組も出演者の年齢の幅が広いですよね。『阿部定の犬』はいわゆる「That’s・アングラ」の文体じゃないですか。台詞を身体化しないと舞台に立ちあがってこないと思いますが、その辺はどうですか?

 

笠井:戯曲はエロスと狂気と猥雑さを帯びていて、観るものを引き付ける魅力があるんですが、現代の私たちが今、上演するとなったら当時と時代背景は違うし、書かれている文体も今だったら違うよな、というところもあるので、俳優が取り組むにはすごく難しい本だろうと思いました。そこで初演を観た方のお話を聞いたり、『阿部定の犬』の上映会などをして、ちょっとずつ俳優の血と肉にしていく作業をしています。その他にも「天皇」に対する捉え方など、今の若い人と70歳くらいの方だとけっこう食い違うので、その差をどういうふうに埋めていくかも探っていきたいと思っています。冒頭から「あたし」=阿部定が「あたしの切りとりましたのは、好いた男のちんちんであります。天子さまのでは、ございません」と言うわけです。その台詞から始まるだけでも魅力的なんですが、ひょっとしたら今のお客さんは「天子さまの~」と言ったら、輪っかをつけた「天使」を思い浮かべる方がいるかもしれませんね。

 

蟷螂:あー、いるいる。耳で聞こえるだけだから、わからない人は山ほどいるだろうね。

 

笠井:その差を良い方に転ばせることが出来たらいいなあと思っています。それはそれで解釈は出来ると思いますので。

 

蟷螂:企画のルールとして台詞は一切さわれないけど、例えばその「天子さま」が“エンジェル”なのか“陛下”なのかという、解説めいたことは一切やらない?

 

笠井:それはしませんね。ただ、一つだけ、台詞を変えようかなと思っているところがあります。子供が生まれて、その子をどこに送りこむかという話が出た時に、「カゾク様のところにでも」という台詞が出てくるんですよ。

 

岩崎:「華」の方ね。

 

笠井:そうです。でも「華」の「華族」っていうのはたぶん、今の観客が耳で聞いてもわからないだろうなと思うので、そういう部分をどうしようかなと…。「天子さま」はいろいろと幅があるので面白いと思うんですけれども、「華族」を「ファミリー」だと思われても全然面白くないので、その辺は工夫したいなとは思っています。

 

蟷螂:『とりあえず、ボレロ』でも和服を着た女の人が、台本では大柄な人という指定になっているけど、実際に演じる俳優は大柄じゃないんだ。うちはそこを工夫しようとしてますね。

 

 

「演劇」の入り口

 

岩崎:笠井さんは1979年生まれで、この作品の初演が1975年。アングラ時代のど真ん中で生まれた作品なんだけど、笠井さんが演劇を始めた時は90年代の演劇状況になってたわけでしょ。

 

笠井:私が演劇を始めたのは97年に大学に入学してからです。あ、ちょっと、蟷螂さんとの話もしていいですか? 私、実は在学中にPM/飛ぶ教室さんの公演に音響スタッフとして参加していたことがあるんです。

 

蟷螂:えっ? マジで?!

 

笠井:当時、音響家の堤野雅嗣さんが近畿大学で教えられていたんです。私は堤野さんに師事していたので、大学2年と3年生の時に連れられて様々な現場に行っていまして、その中でPM/飛ぶ教室さんにもお邪魔していました。『水嶋さんのストライキ』(再演。1999年)と、『足場の上のゴースト』(2001年)でした。

 

蟷螂:『水嶋さん~』は東京公演も来たの?

 

笠井:行きました。

 

蟷螂:あら~…(一同笑)。この前、アイホールで笠井さんにお会いした時は、俺も福井も山藤もすっかり忘れていたからね…。

 

笠井:15年も前の話ですからね(笑)。まあ、そんな感じで大学の4年生の時まで音響の道を志していたんですけれど、ハイナ・ミュラーの『ハムレットマシーン』を上演する活動に音響として参加した時に、私が演出をやると言ってしまったんです。その上演以来、演出を志すようになりました。で、卒業後どうしようと思っていた時に、近畿大学の西堂行人さんが未知座小劇場(※1)の闇黒光さんを紹介して下さって、闇さんのところに通って、お酒を飲みながら将来どうしたらいいかを聞いてもらいました。

 

蟷螂:闇さんはなんて答えてくれたの?

 

笠井:とりあえず理論武装しろと仰ってくださいました(笑)。あと、これを読んだらいいという本を紹介してもらって。

 

蟷螂:哲学書?

 

笠井:そうです(笑)。その時は哲学が不慣れだったんですが、それがきっかけで哲学書を読むようになりました。

 

 

「アングラ」の入り口

 

岩崎:蟷螂さんは笠井さんが生まれた頃は既に芝居してました?

 

蟷螂:ギリギリしてますね。20歳のころに芝居がやりたくなって状況劇場とか満開座も観てたんですけど、そこに入るにはハードルが高いな、と思っていて。かといって似たようなレベルで歳も近い奴らと部活みたいに芝居がしたくなくて、街のどこかの劇団に飛び込みたかったの。で、当時、プレイガイドジャーナルという雑誌に「犯罪友の会」が劇団員募集の広告を出していて、「資格は問わない」と書いてあるから電話したんです。そうしたら座長の武田一度さんが出て、話しているうちに「自分は黒色テントが好きなんだ」と言うんですよ。それで「一度稽古場においで」って言われて行ったんです。それが運のツキで(苦笑)。初舞台はそこで踏んだんだけど、武田さんは電話で話していた口調と風貌が全然違っているし(一同笑)、稽古でやってることも違って、「これ、黒テントかぁ?」と思ってた(笑)。その黒色テントの『ブランキ殺し上海の春』が状況劇場とはまた違った洗練度で、ものすごく格好よかった。その作品の仕込みの手伝いに行った時に場当たりも見学させてもらったんです。その時は先ごろ亡くなった斎藤晴彦さんが現場を回してたんだけど、それがものすごく厳しかった。20歳そこそこのペーペーの俺なんかにしたら、皆さんすごくキレる芝居をしてらっしゃったのに、もうボロクソですよ、声を荒げて。

 

岩崎:アングラって演出が役者を罵倒するということが一つの流儀としてあったような気がしますね。僕も昔、ある劇場のスタッフに「なぜお前は怒鳴らんのだ」と言われたことがあります。「役者に愛想よくダメ出しなんてしたってあいつら聞きやしないんだから、もっと怒鳴れ」と。蟷螂さんはその洗礼をガンガン受けてたわけでしょ?

 

蟷螂:うん。あったあった。稽古に行くのが嫌でねぇ。稽古終わった瞬間が一日のうちでいちばんホッとするの。でもあっという間に次の稽古が始まるから、毎日死にたくなっていたけど、それで教わったことってたくさんあるよね。岩崎さんはそういう経験は?

 

岩崎:当時の大阪芸術大学にもそんな先生はいました。担当の教授から学校とは思えない、とんでもない言葉で罵られました。とりあえず自分の自意識なんてものは剥奪されちゃう。

 

蟷螂:「ゼロだと思え。お前、自分に何かあると思うな、馬鹿!」と言ってね。そこから始まる(笑)。それでヘトヘトになって後先わからなくなった時に、そうとしかできなかった芝居を褒められたりする場があってね。それは今でも忘れられないですね。でも俺はとっちめられる稽古がトラウマになってるから、自分の現場では声を荒げることはしないです。

 

岩崎:笠井さんはしないでしょ? そんなイメージもないし、稽古場で人物が豹変してたら別だけど。

 

笠井:そうですね、大学時代に同級生で演出をする人たちを何人か観てきて、怒鳴ったり衝突してうまくいってる稽古場を観たことがなかったので、そういうやり方はしなかったですね。だけど、もし、うまくいくとわかっていたらやるかもしれません。

 

岩崎:ある種、君主的に振る舞える人が集団を維持していた時代があったということだよね。今はみんなフラットに並んでる感じだけど。やっぱりお二人は19歳の年齢差があるから演劇への入り方もずいぶん違いますね。

 

笠井:俳優の中に演出を「先生」と呼ぶ人がいますけど、それは抵抗がありますね。私は演出も共同創作者であると考えています。岩崎さんの仰るように、君主になるのは抵抗がありますね。そういうのは世代間のギャップがあるかもしれません。

 

 

新劇からアングラへの系譜

 

岩崎:昨年、『友達』(安部公房・作)を現代演劇レトロスペクティヴで上演した際に、演出家の大橋也寸さんがシアタートークでお見えになって、安部公房スタジオ立ち上げのときに清水邦夫さんと二人で入らないかと誘われたという話をしてらっしゃいました。そう考えるとやっぱり、清水さんは文体意識もそうだけど新劇系列の流れから木冬社を作ってらっしゃるというイメージが強くなりますね。

 

蟷螂:清水邦夫さんの戯曲は新劇寄りですよ。とても言い慣れない。うちの劇団は俺が関西弁で台本書くから、余計に。

 

笠井:でもやっぱり、お話を伺うと、新劇とアングラって繋がってますね。新井純さんという黒色テントの看板女優さんで、『阿部定の犬』の「あたし」の役をやってらした方に東京でお会いしたんですけど…。

 

蟷螂:えぇ、本当?

 

笠井:新井さんはもともと、俳優座の養成所のご出身なんですね。だからダンスとか演技の基礎をものすごくしっかりやった上で黒色テントに合流して、アングラと言われている演劇を担っていったわけですから、今の私たちが一方的に思うものじゃなくて、もっと分厚い層になっているんじゃないかなと思いますね。

 

蟷螂:東京ではその通りだね。大阪はまた違うけどね。新井純さんは今どうされてるの?

 

『CABARET 阿部定の犬』。東京と盛岡で開催

笠井:お元気で、実は6月に『阿部定の犬』というコンサートをされるそうです。新井純さんと、『阿部定の犬』の初演で死体の役をやっていた石井くに子さんと、服部吉次さんの3人で。

 

蟷螂:へぇぇー。

 

笠井:昨年、流山児祥さんがプロデュースした『阿部定の犬』の上演を観て、また私たち歌いたいね、やりたいね、ということで劇中歌のライブをやるそうです。

 

蟷螂:新井純さん、格好よかったよ。あと桐谷夏子さんという人も居てね。その人が劇中歌を歌ってて、すごいチャーミングだった。今でも覚えてる。

 

 

両演出の“顔”と企み

 

岩崎:今回の作品、多種多様な年齢層の方が観にいらっしゃると思いますが、蟷螂さんは『とりあえず、ボレロ』を立ち上げることで、こんな作品になればいいなあというのがありましたら教えてください。

 

蟷螂:約30年前の戯曲だけど、新作として立ち上げる。お客さんにも、これが作ったばかりの“現在の”『とりあえず、ボレロ』ですよ、という提示をしたい。ルールとして「台詞を変えない」ということですから、それ以外の方法で現代性を表現出来るようにしたいです。日本海が近い写真館が舞台なんだけど、舞台美術としてそれをただ作るだけじゃつまらないから、写真館自体が勾配の上に建っているしつらえを考えています。アイホールという広い場所でそういう工夫を盛んに凝らしたいね。自分の台本でやる時もそうなんだけど、小屋入りする前に自分がいちばん最初の客になれるので、今回もそれが楽しみです。

 

岩崎:では、アイホールで『阿部定の犬』をやる笠井さんの企みは?

 

笠井:ひとつはね、この共通チラシがあるじゃないですか。 向かって左側に蟷螂さんの顔があって右側に私の顔があって、これね、非常に特徴を表しているなと思うんですよ。この写真を見て「僕は何を考えているかわからない顔してるんだ」と、初めて気が付いたわけです。透明人間のように、このままスーッと消えていっても何ら害のない感じすらするじゃないですか(一同笑)。対して蟷螂さんの写真には透明人間の面影はちっとも見えませんよね。

 

蟷螂:見えないね。

 

笠井:そうすると僕は写真の真ん中の空白に何があるのかな、ということしか考えられなくなるので、この何もない白い部分を使って、ある一つの「世界」をお客さんに想像させるような作品創りをしていきたいと考えています。今回の『阿部定の犬』は、「安全剃刀町」という、あるひとつの虚構の世界を劇場の中で立ち上げて、その世界の中で起こっている出来事をお客さんに楽しんでもらう。そうすれば、いろんな世代の方に楽しんでもらえるのではないかなと思います。

 

岩崎:現代演劇レトロスペクティヴの特徴としては、初演を観劇したことのあるお客さんが紛れ込んでくるんだよね。そういう人たちがどういうふうに観るかというのも楽しみですね。

 

笠井:理想は若い人にも楽しんでもらいたいですけど、往年の人たちの酒の肴になるような作品にしたいですね。観た後にその人たちが呑みに行って「あの時とこう違ったな」とか、「昔の方が良かったな」とか、「でも今回のここは良かった」とか、なんでもいいんですが、良い方でも悪い方でも語り合ってもらえたら楽しいなと思います。

 

岩崎:なるほどね。昔の人たちはそうやって酒飲みながら温和には語らない(笑)、というところを蟷螂さんはいっぱい通ってきてるわけですけどね。

 

蟷螂:いや、まあ、はい(苦笑)。

 

岩崎:お二人の話を聞いていてとても楽しみになりました。お稽古に励んで良いものを作って下さい。今日はありがとうございました。

 

蟷螂・笠井:ありがとうございました。

 

5月29日 大阪市内にて

※1 未知座小劇場・・・1975年『ぼくらが非情の大河を下るとき』(清水邦夫・作)で旗揚げ。1977年に大阪府八尾市に同名の稽古場を設立。関西屈指のアングラ劇団としてテント公演と稽古場公演を定期的に行い、現在も地方公演を敢行するなど、精力的に活動中。

 

平成27年度AI・HALL自主企画
現代演劇レトロスペクティヴ

 

PM/飛ぶ教室
『とりあえず、ボレロ』
作:清水邦夫 演出:蟷螂襲
2015年7月3日(金)~6日(月)

詳細はこちら

 

エイチエムピー・シアターカンパニー
エクスペリメンタル・パフォーマンス
『阿部定の犬』
作:佐藤信 演出:笠井友仁
2015年8月6日(木)~9日(日)

詳細はこちら

 

※上演作品の初演時の様子などを掲載した特設サイトも是非ご覧ください。

 

「みんなの劇場」こどもプログラム『とおのもののけやしき』
アイホールディレクター・岩崎正裕インタビュー

 

 

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アイホールでは、2015年8月21日(金)~23日(日)にオリジナル子ども向け演劇作品『とおのもののけやしき』を上演します。

作・演出のアイホールディレクター・岩崎正裕に、本作のみどころや公演への意気込みを聞きました。


 

■「みんなの劇場」こどもプログラムについて

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岩崎正裕

岩崎正裕(以下、岩崎)アイホールでは、平成20年度から年一作のペースで子どもを対象とした演劇作品を取り上げてきました。初年度は、ディレクターである私が作・演出を務め、アイホールのオリジナル作品として、子どものための音楽劇『どくりつ こどもの国』を創作しました。翌年には、この作品を公共ホール演劇ネットワーク事業として再演し、大きい町から小さい町まで全国4ヶ所を巡演させていただきました。

 その後、他の劇団や劇場で創られたお芝居を、伊丹の子どもたちに提供しようということで、さまざまな子ども向け作品を毎年上演するようになりました。昨年度は、東京の劇場「座・高円寺」のレパートリーで未就学のお子さんにも楽しんでいただける『ピン・ポン』を上演し、幅広い観客層にアピールすることができました。

 今回、当プログラムがスタートしてから数年が経過し、新作を再びアイホールで創る必要があるのではないかという話になり、『とおのもののけやしき』を製作する運びとなりました。

 

■世代を繋ぐ怪談話

 企画段階で作品のテーマは怪談がいいのではないか、という話になりました。しかし、本当に子どもたちを怖がらせてしまい、二度と劇場に行きたくない(笑)という気持ちを持たれてしまうと、劇場の門戸を開いて、子どもたちにおもしろい作品を見てもらいたいというアイホールの趣旨と合わなくなってしまう。そこで、怪談とは別にもう一つ大きいテーマを持ってくることになりました。その中で出てきたキーワードが「昭和の道具たち」です。

 モノが日々刻々と更新されている世の中において、50代の私には、現在の日常品や機器などの使い方がわからないことがよくあります。逆に言えば、かつて昭和の時代に使われた電化製品や生活用品、農耕具などが全くわからない子どもたちも多いと思います。世代間で断絶されてしまった「道具」を子どもたちが知る。そこから大人たちとの新しい対話が構築されていく劇をつくろう、という方向で内容が決まっていきました。

 

■「子ども」と「もののけ」が出会う一夜の成長譚

IMG_9185 舞台は、昭和の道具がたくさん残されている古い蔵の中です。そこに小学生のお兄ちゃんと妹が閉じ込められる、というところから物語が始まります。

 二人は亡くなったおばあちゃんの遺品整理のため、お母さんと田舎の家を訪れていたところでした。その夜、妹が遺品整理で入った蔵の中に大事なぬいぐるみを置き忘れてしまい、兄と一緒に取りに入ったのですが、突然、扉が閉まってしまう・・・。「扉が閉まって暗いところに閉じ込められてしまう」くだりは、怪談の常套を踏襲しています。

 扉が閉まってしまうと、もののけが現れ、「今から出す十個の道具の謎を解いたらこの蔵から出してやる」ということで兄妹たちが協力してその道具の名前、使い方などを答えていく、いわゆる「問答形式」で物語が進んでいきます。

 最初は「お雛様」が、その次は鏡の中から現れた「鬼」が、昭和の電化製品や農耕具の謎を出していきます。最後に出てくるのは、水木しげるさんの『日本妖怪大事典』(2005年)にも載っている「納戸ばばあ」という妖怪です。これは、物置を開けるとおばあさんがいて「ホー! 」という雄叫びを上げてそのまま縁の下に隠れる・・・というだけの妖怪です(笑)。おそらく、古くは勝手に忍び込んで住んでいた、ホームレスの老婆を指しているものと思われます。この物語に出てくる納戸ばばあは、怖がらせるのかと思いきや、子どもたちにご飯を食べさせてくれたり、頭をなでてくれたりする優しい妖怪として描きました。子どもたちには、それが、春に亡くなったおばあちゃんのように見えてくるわけです。

 十個の謎を解き終わる頃には朝がやってきて、一回り大きくなった子どもたちは、扉を開けて外へ出て行きます。本作は、少年少女の一夜の成長譚としても味わっていただける作品です。

 『とおのもののけやしき』の「とおの」は、民族学者の柳田國男さんの民話集『遠野物語』(1910年)と、もののけたちが出す「十(とお)のなぞなぞ」が掛かっていて、さらに、兄妹のおばあちゃんも「東野(とおの)」という名字になっており、三つの掛け言葉になっています。

 

■伊丹市立博物館との連携

 今回、物語に必要なたくさんの昭和の道具をどう集めるかにいちばん苦心しました。その際、アイホールのスタッフから「市立博物館にもそういった道具が収蔵されている」という話を聞き、実際に見学させていただくことになりました。収蔵庫には、私たちが想定していた昭和の道具が“市民の寄付”という形で、きれいに分類・収蔵されていました。収蔵品を貸していただけるか不安だったんですけれども、「伊丹市民から寄付していただいたものをこういった広がりを持って使っていただけるのは良いことだ」ということで、博物館の館長さんはじめ学芸員のみなさんに協力を仰ぎながら、収蔵品の何点かをお借りし、道具のレプリカを製作することもできました。

 こうして市立博物館の協力を得たことにより、思い描いていた蔵を舞台美術として立ち上げることができるようになりました。

 

■出演者について

 DSC_6837 本作の出演者は三人です。幼い兄妹の兄・ひなた役を、劇団「空の驛舎」で活躍していらっしゃる三田村啓示さんが演じます。子どもから大人へ成長する途中である小学校高学年の男の子が持つ“いびつさ”を体現できる俳優です。小学校3年生の妹・とわ役を演じていただくSun!!さんは、演劇のほかにダンスも歌もやっていらっしゃる非常に多彩な方です。暗闇の中ですっと立っているだけで妖精のような雰囲気があり、お兄さん役の三田村さんとのコントラストが非常に美しく見えます。

 一方、もののけ役は、宮川サキさんという女優さんが三役を演じ分けます。宮川さんは一人芝居のレパートリーをここ十年来ずっと続けており、複数のキャラクターを演じ分けることに長けている方です。今回、彼女が“もののけ”を演じることで、子どもたちにも“演じ分けのおもしろさ”が分かってもらえるような仕掛けになっていると思います。

 

■父の視点から描く

 今回の台本を書いてみて、身近に作品のモデルがいるのは強いなと思いました。僕には二人の息子がいるんですけれども、本作では彼らの会話がそのまま形になっており、子ども同士の喧嘩の様子を微笑ましく舞台に表現しました。

 年の近い兄弟は、毎日の生活の中でお互いを許容し合えない。単純に言えば、喧嘩しているわけです。演劇の台詞というのは「セリフ」と呼ばれているだけあって「競り合う」ものであるわけです。まさに、小学生という設定は演劇にぴたっとはまってくるという実感があります。

 子どもたちは怖いことが大好きかと思えば、暗がりを恐れたりするところもあります。怖さとは何に端を発するのか、今回の稽古でもいろいろと探っているのですが、人間は生まれてからずっと死に向かっている、その死への傾斜に対する根源的な恐怖じゃないかと思っています。本作の設定では、そういった怖さに、妹のほうが早く気づいているんです。男の子は高学年でも、まだ生命力に溢れていて、バカばっかりやっている。女の子の方が、おばあちゃんの死に対しても早く興味を抱いていく。この作品では、男女によって異なる子どもたちの成長へのまなざしも描いています。子どもたちが自分自身の置かれ
宣材写真_1ている地点や生活を見つめ、考え直してもらうという視点でも、物語を味わうことができます。

 物語の兄妹を自分たちの家族に重ね合わせて「あの場面はうちで話している会話とそっくりだったね」という話をしてもいいし、おじいちゃんやおばあちゃんが昭和の道具を思い出しながら「私はあの道具の謎が先にわかっていたけど」と答え合わせをしてもいい。終演後、そんな風に家族の中でさまざまな会話が弾んだらいちばんいいですね。子どもたちが眠りに就く前に、ちょっと怖かった昭和の道具や、観終わった後の会話を思い出してもらう。そんな感じの作品になったらと思います。

 

■子どもの感性に響く作品

 子どもたちに小さい頃からこの劇場を知ってもらうことで、劇場文化が世代間を越えて定着していく可能性があると思うし、その入り口を作っているのがアイホールであるとも思います。だからこそ、今回の作品は大人の教訓めいたものは極力排除し、子どもの感性で観ておもしろいと思うものを大事にして創作しました。

 実際に伊丹にあった道具を活用し、子どもたちが昭和の道具に出会っていく過程を描く本作は、ぜひたくさんの子どもたちに観ていただきたい作品です。また、ご家族で足を運んでいただくと、それぞれの世代によってまた一味違うお芝居の見方を楽しんでいただけると思います。

(2015年8月 アイホールにて)


 

青年団『平田オリザ・演劇展vol.5』
平田オリザ インタビュー

 

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AI・HALL共催公演として、青年団が2015年10月9日(金)~12日(月・祝)に『平田オリザ・演劇展vol.5』の上演を行います。作・演出の平田オリザさんに、作品についてお話いただきました。


 

■『平田オリザ・演劇展』とは…

oriza2アイホールでは毎年公演をさせていただいているのですが、今年度はふたつ公演をします。まずは10月に『平田オリザ・演劇展vol.5』を、来年2月に『冒険王』と、日韓合同の新作『新・冒険王』を上演します。ですので今年度は計7作品をアイホールで上演することになります。これは新記録ですね(笑)。

私の本公演の作品は15人とか20人が出るような群像劇が多くて、それはそれで私の持ち味ですし、いちばん力を発揮するところなんですが、それだけやっていると、台詞を書く力が萎えてくるんではないかと思っていて…それで意識して、大体2年に1本ずつくらい少ない人数の対話劇、小説でいえば「短編」みたいなものを書いてきました。そういった作品がたくさん溜まってきたんですが、短い作品が多くて、単独で上演するのもなかなか難しいので、「だったらいっぺんにやろう」ということで始まったのが、この『平田オリザ・演劇展』です。昨年、この企画で東北を巡演しまして、大変好評だったものですから、今回は関西ツアーを行うことになりました。

 

■『この生は受け入れがたし』

『この生は受け入れがたし』は、1996年の1月に弘前劇場との合同公演のために書き下ろした作品です。台詞の半分は津軽弁になっています。初演では、高校演劇の世界でも今、大変有名な畑澤聖悟さんが出演していました。

seinendan01この作品は、「寄生虫」をテーマにしています。私自身、『カガクするココロ』や『北限の猿』など、科学の研究室モノをずっと書いてきたんですが、それのスピンオフみたいな位置付けでもあります。もうひとつは、小津安二郎さんの『麦秋』に、原節子さんが結婚する旦那さんが、「寄生虫の研究をしている」という台詞が一言だけあります。マニアじゃなきゃわからないぐらいの台詞なんですけども、「秋田に行けばツツガムシもいるし、研究できるんだ」みたいなことを言うんです。それで、その夫婦が東北に行ったあとの話を書いてみようと思って書いた話です。要するに、東京から来たふたりが、東北の生活に慣れないで苦労するという話なんですが、これは津軽弁じゃなきゃ出来ないということもあって、ずっと再演をしていませんでした。ところがたまたま、弘前劇場にいた俳優ふたりが、東京でも活動したいということでうちの劇団に入りまして、それで2013年に再演することになりました。ただ、初演時と何より違うのは、東日本大震災を挟んでいるということです。「東京と東北、どちらがどちらに寄生しているんだ?」という問いが、この作品の大きなテーマだったんですが、東日本大震災で、電力やサプライチェーンの問題、東京あるいは京浜工業地帯を東北がいかに下支えしてきたかということが明らかになってしまったため、期せずして非常にアクチュアルな問題になって再演をしました。これは昨年、東北でも上演をして、大変好評だった作品です。

oriza4寄生虫の話は、私は話し出すと2時間くらい喋れるので、ここでは控えておきますけれど(笑)、寄生虫学者という方たちは非常に面白くて、本当に寄生虫を愛していらっしゃって、「寄生虫は悪くない」という立場なんです。寄生虫の宿主というのは決まっているんですが、間違ったものを人間が食べちゃうと、寄生虫が間違ったところに入っちゃって、人間に悪さをする。だから、「間違ったものを食べた人間が悪いんだ」というわけなんです。完全に寄生虫の立場で話をされるんですね(笑)。皆さんご承知のとおり、大阪大学の石黒浩さんは完全にロボットの立場で話しますし、京都大学の山極寿一さんは完全にゴリラの立場で話されます(笑)。私はそういう学者たちが大変好きで、そういう方たちに劇作家として興味があるので、この作品をつくりました。

目黒に、「目黒寄生虫館」という、今は観光スポットにもなっている非常に変わった博物館があるんですけども、そこの故・亀谷了(かめがい・さとる)館長が『寄生虫館物語』という本をお書きになっています。1994年に私はそれを読んでこの作品を書いたんですけど、スズナリでやった初演を、その亀谷先生が観に来てくださいました。当時、先生は80代半ばくらいで、スズナリのあの階段を登れるかどうかお弟子さんたちが心配したくらいだったんですけど、観ていただいたあと、すごく熱烈な…「もうこれで日本も安心です」みたいな手紙をくださって(笑)。それ以来、寄生虫館にも全面協力をしていただいており、今回もロビーで寄生虫グッズを販売します。これが結構売れるんです(笑)。関西の方にとっては結構レアものなので、ぜひそちらもご覧ください。

 

■『走りながら眠れ』

seinendan02これも1992年に初演したんですが、2011年に19年ぶりに再演をしました。この作品は大杉栄と伊藤野枝が殺される直前の約40日間を描いています。ご承知のように、ふたりは関東大震災のどさくさに紛れて殺されるわけです。2011年の再演は、東日本大震災の直後だったので、タイムリーと言っていいかわからないのですが、意義深い公演になってしまいました。これは私の芝居には珍しく4つのパートにわかれていて、時間経過が多少あります。大杉栄がパリから帰国し、伊藤野枝が最後の子どもを産み、そして震災の前日までが描かれます。非常に淡々としたアナーキストの日常が描かれている作品です。

 

■『忠臣蔵・OL編』『忠臣蔵・武士編』

『忠臣蔵』は、1999年に静岡でのシアターオリンピックスの際に、宮城聰さんからの依頼で書いた作品です。これは市民100人が参加する壮大な野外劇として上演されました。このときには大石内蔵助の役を、花組芝居の加納幸和さんが演じられました。ただ、コアの話はものすごくちっちゃな僕の典型的な作品で、7人の俳優によって構成されます。

seinendan04これは、書いたときから「結構うまく書けたな」という感触があったので、劇団内の勉強会などで、シチュエーションを変えてちょっとずつ試しにやってみたりしていたんです。それで2003年に、その中でもいちばん面白かった座組みの『OL編』というのを上演しました。それ以外にも、『修学旅行編』や『自衛隊編』とかいろいろあります(笑)。忠臣蔵というのは、「俺たちは武士といっても戦わないんだから…」みたいな話を延々する話なので、今、『自衛隊編』をやったら面白いかと思うんですが…。とりあえず『OL編』というのが出来て、これは後で触れる『ヤルタ会談』という作品と一緒に、2006年には全米8都市を回るツアーも行っております。亡くなられた文学座の戌井市郎先生が、この作品をものすごく気に入ってくださって、新国立劇場でやったり、文学座の座内でも繰り返し上演してくださいました。戌井先生はよく、私のこの『忠臣蔵』のことを、「今まで出会った戯曲の中でいちばん面白い」と言ってくださっていて…そんな日本の新劇の生き字引のような方から言われると、岸田國士とか加藤道夫とかが、この作品に負けたっていうのはちょっと可哀想だなと思う(笑)。でもそれくらい本当に愛してくださって、上演され続けています。英語にも翻訳されているので、いくつか小さな座組みですけど、海外で英語版の上演もされています。

seinendan05そんなふうにいろんなバージョンがあったんですが、『OL編』は女子しか出ないので、男優陣から「男も出してください」という意見が非常に強くて、それで昨年『武士編』をつくりました。『武士編』って、忠臣蔵だから当たり前じゃないかという話なんですけど(笑)、そこもちょっと狙いです。いずれにしても、「浅野内匠頭、殿中で刃傷」という報せが来てから、お城で会議が開かれたということになってるんですけども、その「大評定」が開かれる前の60分くらいの、ぐだぐだした会話が描かれています。日本人の意思決定のプロセスが非常に緻密に描かれているんじゃないかと。いま丁度、稽古をしているところなんですけど、現時点で見ると本当に、新国立競技場問題とかエンブレム問題を狙って書いたんじゃないかと思うぐらい(笑)、日本人は本当にだめだなあというところがよく出ているかと思います。

 

■『ヤルタ会談』

seinendan03これは2002年に、噺家の柳家花緑さんからの依頼で書き下ろした作品です。花緑さんに、「落語は、いっぺんに何人まで出て大丈夫なんですか」と聞いたら、「まあ、ふたりが基本だけど、3人までは大丈夫です」という話で、それで何がいいかなと思って…最初は薩長同盟というのを考えました。坂本龍馬と桂小五郎と西郷隆盛がうだうだ話をしているというのを考えたんですけど、落語で薩長同盟だとそのままなので、もうちょっとずらした方がいいだろうということで、ヤルタ会談を思いつきました。チャーチルとスターリンとルーズベルトが、最初の15分はヨーロッパをどう分けるかという話をだらだらしていて、後半の15分は日本をどう分けるかを話す、という構成になっています。これは一応、落語のほうでは実はサゲがあって、「番町皿屋敷、四谷怪談に並ぶ、世にも恐ろしきヤルタかいだん(・・・・)の一席」というのがサゲだったんです。落語にしたつもりだったんですけど…花緑さんはそれ以来一度も上演してくれない(笑)。それですぐに演劇版をつくって、そちらのほうは好評で、毎年のように上演を続けております。

 

■質疑応答

Q.今回、この5演目を選んだ基準はありますか?

順番や、観客動員も考えつつ、あと座組みのメンバーのことも考えつつ大体決めていくので、そんなに理由はないんですが…。一応折角の関西初なので、全体を通して観ていただくと、「日本人とはなにか」みたいなものが、少し見えてくるかなとは思います。

 

Q.今まで短編として書かれたのは、どのくらいの本数になりますか?


oriza3どこからを「短編」と数えるかも難しいんですけれども…出演者の数でいうと『忠臣蔵』が7人、『この生は受け入れがたし』が6人、今回は上演しませんが『銀河鉄道の夜』で5人…、それくらいの作品が12~13本はあるかと思います。日本では短編は上演が難しいこともあって、なかなか書く習慣がないんですけども、例えばテネシー・ウィリアムズやワイルダーも、短編を結構たくさん書いてるんですよね。短編を書くというのは、劇作家にとっては大事なことで、小説でも長編しか書かない作家もいますが普通は両方書くし、短編を書くことによって蓄積される力というのはあります。なので若い劇作家たちにも、そういうものも書いたほうがいいよとは勧めてるんです。私自身も出来るだけそういう機会をつくりたいと思っています。やっぱり短編の面白さ、というのがあるんですね。1時間以内で終わって、4~5人の登場人物できっちりつくる…まさに短編小説と同じような感覚です。たくさん登場人物が出ていると、大変なことは大変なんですけど、ちょっと逃げ道もあって、行き詰ったら「こいつ出しとくか」みたいな(笑)。人数が固定されていると、そういう逃げ道がなくて、台詞だけで話を進めていかなくてはいけないので、その分の力は付くと思います。作品をきっちり60分なら60分で完結させると、うまいプラモデルをつくったような、そういう感じはあります。

 

Q.戯曲を書いた年代によって、何か作品に違いはありますか?

書くのが巧くはなってると思うんですが…巧いから面白いというわけでもないので(笑)。『忠臣蔵』は技術的には、すごく巧く書けていると思うんですけどね。劇作家なので、科学者みたいに成長していくわけではないので、逆に20代のときのほうが背伸びしてて、大人ぶって書いてたりもします。20代の最後くらいに書いた『S高原から』という作品があって、名古屋で初めて公演したときに、(劇作家の)北村想さんから、「お前、20代でこんなこと書いてたら、早死にするぞ」と言われましたからね(笑)。

 

Q.初演時から、演出で変えたところはありますか?

『走りながら眠れ』や『この生は受け入れがたし』は20年ぶりくらいの再演だったので、もう演出は全然違います。俳優ももう全員変わっています。『忠臣蔵』は、元々すごく柔軟性のある台本なので、それぞれの座組みで形式が全然違います。台詞も多少違います。『ヤルタ会談』は、演劇版をつくったときからほぼ変わってないですね。

台本に関しては、『この生は受け入れがたし』だけは、東日本大震災が起こって、それに触れないわけにはいかないので、変えています。それと、緑川史絵が演じる役が、元々初演のときは男優が演じたのですが、いろいろ考えた結果、女性にしました。また、この緑川がたまたま福島県のいわきの出身なんです。だから、福島から避難してきたという設定に変えています。

 

Q.大杉栄と伊藤野枝を書かれたときの動機や関心は?

実は私の「平田オリザ」という名前は本名なんですけど、私の父は「オリザ」という名前にするか「栄」という名前にするかどっちかで迷ったそうなんです。それを子どもの頃から聞かされていたので、多分そんなところから思い付いたんでしょうね。あと、大杉栄がヨーロッパに行っていたことは勿論知っていたんですが、たまたま本を読んでいて、「うわ、こんな短い期間で帰ってきて、最後の子どもが生まれて、殺されちゃったんだ」というところに気が付いて、「これなら芝居になるな」と思ったんでしょうね。もう20年以上前ですからおぼろげなんですけど、戯曲の最初の取っ掛かりというのは大体そういうところにあります。

 

Q.書くときに資料は読んだりされますか?

『走りながら眠れ』は、さすがに読みました。でもいちばん読んだのは『忠臣蔵』ですね。『忠臣蔵』は、「これだけ調べて、こんなくだらない芝居?」っていうくらいに読みました(笑)。井上ひさしさんが『イヌの仇討』という作品を書かれていて、井上さんは元々山形の方、上杉家なので、吉良派ですから(笑)その視点でお書きになっています。で、井上さんが書くとなると、神田の付き合いのある古本屋に「ちょっと集めてくれ」と連絡をして、そうすると神田中から忠臣蔵関連の本がゴソッと持って行かれるわけです。大体、軽トラック1杯分くらい船橋とか鎌倉に運んで…。いちばん困るのが、司馬遼太郎先生と題材がバッティングしたときだと(笑)、そういう伝説を聞いたことがあります。今はその集めた本が全部、山形の遅筆堂文庫に入っているんです。公開されている部分と、書庫の部分があって、当時これを書くときに井上さんにお願いして、書庫を見せていただきました。本当に書庫なので、この部屋の端から端くらいまで全部、忠臣蔵(笑)。それを丸1日そこにいて見せていただいて、必要なものはお借りしました。なので忠臣蔵はほぼ全部読みましたね。


 

青年団『平田オリザ・演劇展vol.5』

平成27年10月9日(金)~12日(月・祝)

詳細はこちら

TONE dance&co
『い ち ~二の前~』

令和7年8月30日(土)~31日(日)

令和7年
8月30日(土)14:00/19:00
8月31日(日)13:00/18:00

※開場は開演の30分前。


命を紡ぎ、意志を織り、身を纏う
命はやがて燃え尽き、形あるものはいつか朽ち果て
存在したものは消えて無くなり、いつの間にか忘れ去られていく
必ず訪れる終わりを、新しい命へと継ぎ

火を絶やさず、時代を越えて、生き続ける
はじまりの「い ち」へ


■チケット/
前売 5,000円
当日 5,500円


【伊丹市民招待】
伊丹市民の方、先着5名様に無料招待券をプレゼント!
※お申込みはTONE dance&coの公式LINE公式instagramメール(tone82115@gmail.com)まで。


【お知らせ】イベントホールで公演を行う場合の新利用料金プラン始まります。<令和5年4月1日以降許可分より適用>

★公演プラン★

イベントホールを3日以上連続利用&伊丹市民還元にご協力いただける団体様、施設利用料と付帯設備利用料が通常料金の7割相当になるお得なプランです!
※令和5年度4月1日以降許可申請分より適用となります。

 

◆3日以上の連続利用で演劇・ダンス等の公演を行う

 仕込・本番・撤去まで丸3日以上のご利用に適用します。演劇・ダンス等の一般に向けての公演利用であること。関係者のみの催しや稽古・練習での利用は適用外です。

◆伊丹市民還元チケットの設定があること

 伊丹市民割引、もしくは市民招待(1公演に数名ずつ)でも構いません。チラシやWEBで告知をお願いします。

◆アイホール主催事業のチラシ、伊丹「鑑賞de寄っトク」チラシ、アイホール利用者アンケートの折り込みの受け入れ

◆その他、市民還元事業に協力

 中学生のトライやる・ウィーク(職業体験活動)や大学のインターン生の研修を受け入れる期間に重なった場合にはご協力をお願いします。またその他に、例えば稽古見学やプレトークなど、伊丹市民へのアピール企画など歓迎します(こちらは努力義務です)。

 

 

★ロングランプラン★

公演プランが適用される条件を満たしたうえで、連続利用が7日以上(休館日を除く、最長14日まで)になる場合、施設利用料は通常料金の7割相当ですが、付帯設備利用料が通常料金の5割相当になる、さらにお得なプランです!

 

※ただし上記プランいずれも申請者が伊丹市(および川西市・宝塚市・三田市・猪名川町)以外の団体様、また営利利用と見なされる団体様は、プラン適用後に割増料金がかかります。

 市外割増・・・公演プラン適用後1.5倍

 営利割増・・・公演プラン適用後1.5倍

 市外+営利割増・・・公演プラン適用後2.25倍

 

※別途、舞台管理人件費は各日1名ずつ必要になります。

 1日(3区分)・・・23,100円(税込)/1名(R7年より25,300円)  仕込み・バラシで増員が必要な場合別途、ご相談ください。

 

イベントホール公演プラン含む料金表はこちら

R6年度舞台管理人件費および舞台消耗品等料金表はこちら

R7年度舞台管理人件費および舞台消耗品等料金表はこちら

 

詳細はアイホールまでお問い合わせください。

見積のご依頼はメールでお願いいたします。希望日がお決まりでなくても「ざっくり金額が知りたい」というお見積もご対応いたします。

TEL 072-782-2000  FAX:072-782-8880
E-MAIL: info@aihall.com

大手前大学 映画・演劇ゼミナール 
劇団Fill’m19 解散公演
『魔法使いと希叶』

令和7年8月24日(日)

令和7年
8月24日(日)17:00

※開場は開演の30分前。


ここは、魔法が存在する世界

ある日、魔法を使った犯罪事件
——“マジックケース”が発生する。
事件の真相を突き止めるべく、ホマレを中心に物語の歯車が回りだす。

オズの魔法使いを模したかのような殺人現場、死んだはずの妹の出現、愛し合う二人の男女、そして過去に起きた忌まわしい事件。
マジックケースに関わる中で、彼らは次々と新たな物語に巻き込まれていく。
やがて、登場人物たちは重大な選択を迫られることになる——。

これは、魔法使いたちが紡ぐ、愛の物語。


■チケット/
前売 2,000円
当日 2,500円


極東退屈道場『タイムズ』

平成27年4月24日(金)~26日(日)

2015年4月
24日(金)19:00
25日(土)14:00/18:00
26日(日)14:00

※受付・整理券配布開始/開演の40分前。開場/開演の30分前。

 


独特なモノローグとシーンの断片をコラージュし、ダンス・映像を駆使することで、「都市」の姿を斬新に切り取る極東退屈道場。
大都市固有の交通機関・地下鉄を題材にした『サブウェイ』、フンデルトヴァッサーのデザイン建築から「都市計画」を主題に創作した『ガベコレ』などで次々と話題をさらい、関西演劇界で一躍脚光を浴びる存在となりました。
今回は、第20回OMS戯曲賞特別賞を受賞した『タイムズ』を、「座・高円寺」芸術監督の佐藤信の演出で再演。
家路をたどる4人の女囚たちが、帰巣本能を搭載した未来のクルマ「UMA」に導かれ、場末のゲームセンターから宇宙までを駆け巡る―。
「コインパーキング」という、都市にある宙づりの場所と動かない時間をモチーフに、この世界に在る風景やさまざまな物語の断片と共に描きます。スピード感あふれるセリフと予期せぬ場面展開から抽出される異色作にご期待ください。


■チケット/
一般 前売=3,000円 当日=3,500円
ペア=5,500円
ユース(22歳以下)=2,000円 高校生以下=1,000円
【日時指定・全席自由】
※ペアは前売・予約のみの取扱。
※ユースの方、高校生以下は要証明書。
※10歳未満のお子様のご入場はご遠慮ください。
※演出の都合上、開演直後はご入場いただけない場合がございます。

 

 

■助成/大阪ガス株式会社

平成27年度 次世代応援企画break a leg
福谷圭祐(匿名劇壇)×岩崎正裕(AI・HALLディレクター)対談/前編

 

 

1.匿名劇壇について

b_a_l_44岩崎:僕は大学で演劇を学んで、在学中に劇団を旗揚げしているので、福谷さんたちの考え方や集団の在り方がとても気になっていたんです。きっと僕たちの世代とは考え方も違っているんじゃないかと思うので。

福谷:僕たちは、近畿大学文芸学部芸術学科の舞台芸術専攻21期生が中心になって、2011年に結成した劇団です。在学中はMONOの水沼健さんや竹内銃一郎さん、松本修さんに教わりました。大学での実習とは別に、自主公演を行う機会がありまして、その時に集まったメンバーが主体となっています。結成以降、年二本程度の公演をコンスタントに続けており、今年で4年目になります。

岩崎:同じ大学のメンバーが集まっていると、舞台へのベーシックな部分は共有できているんだよね。

福谷:ただ、演劇の趣味に関しては、そんなに近しいものは感じたことがないです。ゴリゴリのエンタメが好きな子もいますし、静かな会話劇が好きな人もいますよ。

岩崎:ということは、劇団における精神的支柱は福谷さんの作・演出にあるということなのかな。例えば「もっとこういう方向性にしよう」とかは話し合わない?

福谷:作品については、ないですね。もちろん、具体的な公演プランについての話し合いはあります。

岩崎:僕らのときは、卒業して3年も経つと一公演ごとに一人ずつやめていきましたよ。だから、「俺のこと信用して劇団にいるんだよな」という確認はしたいし、それをあえて言葉にせず、次の作業に取りかかっていかないといけない微妙な時期だよね。匿名劇壇の俳優陣は大学時代からほとんど変わらないと聞きました。そう考えると、よく踏ん張ってますよ。

福谷:こんなこと言ったら劇団員に怒られるかな、と思うんですが・・・、みんなは匿名劇壇をやりたくて残ってくれているのかもしれないけど、劇団から誰も去らない状況というのは僕もちょっと異常だと思っています。たぶん危機感がないか、既に心中を覚悟してくれているんだと思います(笑)。

 

2.新作『悪い癖』が描く若者の夢と現実

福谷:作風の説明すwaruikuseる時に「メタフィクション」という言葉を使うのですが、実はそれって曖昧ですよね…。演劇って、言ってしまえばある種のメタフィクションですから。「自画像を描いている」という感覚でしょうか。「自画像」でも「俺たち」でもなく、「自画像を描いている俺たちそのもの」を作品にしているので、メタフィクションの構造が二段階あるところが匿名劇壇の特徴だと思います。

岩崎:前回公演『二時間に及ぶ交渉の末』(2014年)を拝見しましたが、リアルな集団を描こうとしつつも本質的なところはリアルにやろうとしていない。作中に出てきた劇団そのものは、彼らの恋愛関係も含め、全て虚構。そして巧妙に、自分たちの実像からどんどん離れていっている感じがしました。この手の芝居を初めて観た人は「これは本当のこと? それとも嘘?」と惑わされる。それが福谷流のメタフィクションかと思うのですが。

福谷:そうですね。リアルさを持った出来事を、デッサンで描くというより、カリカチュアというか、歪めて誇張して描いているところがあります。

岩崎:『二時間~』は場面数が相当多い印象だったんですけれど、様々な場面から一つの話を構成していくという書き方をずっとしているの?

福谷:初めて台本を執筆した時は、思いつくがまま書いていました。その後、このままではアカンと思い、プロットを作って四場構成の作品を書くようになりましたが、その方法だとあまり筆が乗らなかったんです。それでもう一回、最初の感覚で書いてみようと試みたのが『二時間~』です。結果、意図的にピースの多い作品に仕上がりました。今回も、前作と同じ書き方をしてみようと思っています。全体像を設計してから場面を書くよりも、場面の細部を突き詰めながら書くことで、より深く作品を把握することができるし、作品が自分の思ってもいないところに辿り着ける可能性が大いにあると思っています。

岩崎:物語の時間も行ったり戻ったりして、一方向に流れるわけではないですよね。そういった作品は、昨今「ポストドラマ」と言われたりもしますが、そういう志向で作品を書いているわけではないと。

福谷:ポストドラマを「ストーリーとして説明できないもの」と定義するわけではないんですが、僕の作品は、時系列を前後させたり全然違うシーンを持ってきたとしても、起承転結のあるドラマになっていると思うし、そうしようと思って書いています。

岩崎:具体的に『悪い癖』はどのような作品になりそうですか。

福谷:僕の実生活のグタグタな一面がモデルになっています。例えば、遅刻が多い。貯金がない。年金とかいろんなものが払えていない。…お先真っ暗な感じです(笑)。僕自身は自分のことをそうだとは思ってないんですが、ただ、登場人物をそういうダメな設定にして、かつ性別を女性にしました。彼女を物語の主軸に置き、彼女とは正反対の、もっと煌びやかな毎日を送っている女性のシーンを挟み込んでいきます。

岩崎:いわゆる“リア充”な女性が介入するわけだ。匿名劇壇は男優の存在もすごくくっきりとしていて面白いんだけど、今回、男性はどういう役になるんですか?

福谷:属性的には、概ね恋人です。グタグタな女性に対してグタグタな男が出てくるという。

岩崎:えっ。じゃあ、物語の結末はどうなるの?

福谷:グタグタからの脱却。もしくは、その状況の捉えなおしです。

岩崎:ある意味、肯定的ってこと?

福谷:そうです。自堕落な生活を送っている主人公が、リア充な生活を送っている女性を夢見ているわけです。一方、恋人である男は、彼女にそんな夢を見させないようにする。「お前はこのままの(自堕落な)状態でいいんだ」と。それは彼女に対しての肯定でもあり、レスキューでもありますが、彼女に夢を見させないことで、彼はある種支配的で、悪魔のような存在にも成り得るんです。そういう二面性を出していきたいと思っています。

岩崎:福谷さんたちの世代は、今作の登場人物のことをどう感じているの? 僕らの世代は、社会人3、4年目で少々ダラけていても、“バブル”な時代だったからお金は稼げていたけど、今は違うよね。「大学に行ったらまともに就職する」というルートを敢えて選択せずに、みんなバイトしながら貧乏している。そういった人たちは昨今の“若者たち”の全体像においてマイノリティなんですか。

福谷:いや、むしろそういう人のほうが多いと思っています。ただそのことを悲観的には思っていなくて、夢も希望も“ない”状態がわりとベーシックですね。

岩崎:そうなんだ!

 

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ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』
岩井秀人 インタビュー


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平成27年度公共ホール演劇ネットワーク事業として、7/19(日)・20(祝)に、ハイバイ『ヒッキ―・カンクーントルネード』を上演します。「公共ホール演劇ネットワーク事業」とは、一般財団法人地域創造と複数の公共ホールが共同・連携し実施する事業です。公演に先駆け、作・演出の岩井秀人さんに、作品についてお話いただきました。

公演詳細はこちら

 


02_4岩井秀人(以下、岩井):『ヒッキ―・カンクーントルネード』は、僕が初めて書いた戯曲です。「プロレスラーになりたいけど 引きこもりの男が 外に出られない話」と大学ノートに書いた三行ほどのプロットに、16歳から20歳まで引きこもりだった自分の実体験を交えたものです。2003年にハイバイの旗揚げ作品として初演し、10年以上、再演を続けており、今回で10回目の上演を迎えます。

 

引きこもりだった頃、「リングス」という総合格闘技をテレビでよく見ていたんですが、プロレスラーの前田日明が対戦相手のディック・フライにひどい目に遭わされていたのがどうしても許せず、深夜に近所の公園へ行き、通信販売で買ったサンドバックを木に縛り付けて蹴るということをやってました。プロレスは相手と息を合わせるという、コミュニケーション能力がとても必要な競技なんですが、そのプロレスラーに憧れていた僕は、家に引きこもり、郵便屋さん相手にも挙動不審になってしまうほど臆病だったんです。その理想と現実の開き具合が、自分にとって“悲劇”でもあるし“喜劇”でもあると感じて、当時のことを思い出しながら書きました。

 

あと、岩松了さんの舞台に1ヶ月近く関わったことで、「しゃべり言葉の演劇」を知れたこともきっかけです。それまで僕が大学で教わってきた演劇は、文語体の戯曲で、登場人物の会話にこそ意味があり、そのために俳優は仰々しくてかっこいい台詞を発するというもので、卒業する頃にはそういう演劇に嫌気がさしてまして…。そんなときに出会った岩松さんの舞台は、登場人物の会話ではなく、その様子を黙って見ている人物にスポットを当てている、つまり、メインとなる大きな流れがある横で、そこに関われないでいる人物やその人たちの疎外感を描いている気がして、自分にとって価値のある演劇だと思えたんです。DSC_4953今でも僕は、自分が観客ならば、人生で上手くいかない場面でどういう行動が取れるか、どういう耐え方があるのかを描いた作品に価値があると思うし、観たいと思っています。

 

まあ、当時はそこまで深く考えておらず、岩松さんのような“しゃべり言葉”で台本を書いていいんだという、その自由度に大興奮して、一人でゲラゲラ笑いながら大学ノートに台詞を書き、三日間ほどで仕上げました。興味が赴くまま書きましたから、改めて読み直すと原始人が書いたみたいだと思う(笑)。でも、自分の体験や身近な人たちの現実に起きた出来事を描くという、僕の戯曲のすべてに通じる“原点”になった作品です。

 

――ハイバイでいちばん多く再演されている作品ですよね。

岩井:再演が多いこの公演スタイルは珍しいとよく言われます。でも、僕は新作を次々とつくるより、せっかく面白い作品ができたのだから、まだ観てもらっていない人たちに観てもらえる活動をしたほうが良いと思っています。すごく面白い作品なら、再演するときに「またやってくれるんだ!」とお客さんが知人を連れてきてくれる。僕はそういったことをもっと狙ってやっていかなければと思っています。

この作品は、何度再演しても動員を減らすことなく続けられていて、僕もすごく自信のある作品です。なので、初めてハイバイが東京以外の地域で上演するときも、韓国で上演するときも、選んだのはこの作品でした。東京郊外の50人程度の小さな劇場で初演した作品が、再演を続けることで、今回は全国10都市で上演するなど、どんどん広がりをみせていることが面白いです。

 

――韓国で上演してみていかがでしたか。

岩井:韓国での上演当時、向こうにはまだ「引きこもり」という概念がなかったのですが、お客さんは爆笑してくれましたし、感動してくれました。ところが、ここ1~2年くらいで急激にその問題が出てきているそうです。それで、韓国の方に「もし、自分の息子が家の外に出ず、経済活動もせず、学校にも行かなかったら、どうしますか?」と質問したら、「その情報を家の外に漏らさないようにする」と答えたんです。それって別のいろんな問題が生まれる可能性があって恐ろしいと感じました。日本では、今や、引きこもりのことを「自宅警備」と言い換えて、生き方のひとつと受け入れようとしていたり、会話で「先週、家に引きこもってたんだよね」なんて軽く使われたりするほど、その概念が浸透していってますよね。なんだか改めて、日本って面白い国だなと思うきっかけになりました。

 

――前回の再演で、新しい発見があったそうですね。

撮影:Hideto Maezawa
撮影:Hideto Maezawa

岩井:この作品は、台本をほとんど変えずに、初演に近い状態で再演を続けていたんです。ただ、今年2月に参加したTPAM(国際舞台ミーティング)での上演で、演出方針を変えました。TPAMには多くの海外のお客さんがやってくるのですが、「引きこもり」という概念が日本ほど浸透していない海外の人には、この作品の本来の面白さが伝わりにくいのではないか…と感じたんです。引きこもりの実態を誇張して見せるよりも、まず「引きこもりとはどういう人か」というベースを見せる必要がある。それで演出をシフトチェンジしました。それまでは、「どれだけ(観客を)笑わせることができるか」をいちばんに考えていて、「ここでも笑いが取れる」「あそこでも笑いが取れる」といろいろ詰め込みすぎていたんですが、それを整理してシンプルにしました。その結果、「人は寂しいんだ」という作品の本質的なテーマが浮き彫りになったんです。もちろん、笑えない話になったわけではありません。この作品で何を最低限伝えなければいけないかに立ち戻っただけです。

 

――今までと作品が大きく変わるのですか?

岩井:雰囲気が少し違う程度だと思います。演出を変えたことで、作品に余白ができて、良い意味で、お客さんに考えてもらう時間や、選択してもらう余地が増えました。作品としてもより豊かになったと思います。今まで、演出で作品は変わらないと思っていたんですけど、微妙なニュアンスは変えることができるんですね。普段、台本を書きながら演出をすると、書いたイメージを立ち上げることしか考えていなくて…。それが、演出次第で作品がこんなにも新鮮になるんだと、自分でもびっくりしています。僕は、お客さんには、演劇を観ながら自分のことについて考える時間を持ってほしいと思っているので、僕の目指している方向性の表現に戻すことができたんじゃないかなと思います。だから、今回もこの方向性をベースに作っていこうと思っています。

 

――演出家として、客観的に作品に向き合ったとき、改めて何を伝えたいですか。

DSC_4964岩井:「生きていくことの困難さ」ですね。ただ、これは僕の作品の全部に通じていることで、より多くの人と共有したいから、手を変え、品を変え、いろんな作品に反映させているんですけれど(笑)。僕がお客さんからの反応でいちばん嬉しいのは、「うちにもこういう人がいて」「私もそういう時期があって」と、いきなり自分のことを話し出してくれたときです。作品と自分とを重ね合わせながら僕の作品を観てほしいと思っているからです。『ヒッキー・カンクーントルネード』は、特に僕にとって嬉しい反応が多かった作品です。たぶん、コミュニケーションの難しさ、「自分が他者の中でどう生きていくか」について、問題提起しているからでしょうね。実は、自分で書いたものなのに、すごく長い時間をかけて解読し続けている気がしています。だから何度も再演を重ねているのかもしれません。

 

――同名の小説を出版(※)されていますが、小説を書いたことで異なる見方は生まれましたか。

岩井:小説は書いても書いても一人なので、本当に辛かったです。けれど、登美男が電車で乗客にボコボコにされるシーンとか、舞台で描けなかった部分は思う存分書けました。小説を書いてみて「小説にしかできないこと」をすごく感じることができました。この経験を活かし、稽古のときは、身体性を重視するなど「演劇にしかできないこと」をより意識的にしようと思っています。

※『ヒッキ―・カンクーントルネード』(河出書房新社 2014年刊)

 

――この作品には、「高校演劇」のための台本があるそうですね。

DSC_4965岩井:高校演劇の大会で審査員を務めたことがあるんですが、高校演劇って、時間や人数の制約があるから、好きな台本を選べないんですよね。部員数に合わせなきゃいけないから、面白くなりえないような台本を選ぶしかなかったり、演劇の知識に乏しい先生が台本にとんでもない手の入れ方をしたり…。不幸な状況にあると感じたんです。僕の台本は基本的にほとんど上演許可を出していないんですが、「ダメ」なんて言っている場合じゃないと。それで、90分ある『ヒッキー・カンクーントルネード』を一所懸命削って、上演時間60分の高校演劇用の台本をつくりました。でも印象は通常版とほとんど変わらないんですよ。どうしてなのか僕も不思議なんですが(笑)。あと、高校生という時期に、普通のお芝居をしてほしいという気持ちもあります。主人公は「16歳で引きこもりをはじめて10年近く経ってしまった」という設定なので、演劇を通して、引きこもりを取り巻く家族の立場をほんの少しでも疑似体験してほしいとも思っています。

 

――出演者についてはいかがですか。out_04_2

岩井:今回は、引きこもりの主人公・登美男を田村健太郎が演じます。この役は、今まで僕や元劇団員が演じていたんですが、毎回すごく苦労していました。僕がこの役に思い入れが強すぎるためか、本番中の袖で俳優を捕まえて怒鳴ったり…まあ色々ありました。けど、田村君が入ったことで、とても磐石になりました。反射神経の良さとかクレバーに動ける身体性とかはもちろんですが、彼は恐怖や驚きを自分の内側で起こすことができる俳優なんです。それができる俳優は意外と少なくて…。若いけど素晴らしい俳優です。出張お姉さん役のチャン・リーメイは初演からずっと同じ役をお願いしていますし、平原テツはお母さん役をやり続けてもう10年近くになるかと思います。あと、出張お兄さん役の後藤剛範は、色黒でめちゃマッチョなのに、ビジュアルと正反対の気質を持っている俳優です。彼の中にちっちゃい女の子が入っていて、彼を操作しているんじゃないかなと思うぐらい(笑)。個人的には「いい俳優を発掘したぞ」と思っていて、皆さんにはウハウハしながら観てもらえると思っています。

 

(2015年6月 大阪市内にて)


 

 

劇団チョコレートケーキ 第27回公演
『治天ノ君』

平成28年9月21日(水)・22日(木・祝)

平成28年
9月21日(水)19:00 
9月22日(木・祝)14:00
※整理券配布/開演の60分前。開場/開演の30分前。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。

 2015年に第49回紀伊國屋演劇賞団体賞も受賞した新進気鋭の劇団「チョコレートケーキ」が、代表作『治天ノ君』でアイホール初登場。緻密な調査に基づいて練り出される劇作・古川健のハードな台詞表現に加え、純度の高い人間関係を表出させる日澤雄介の演出により、硬質ながらも生々しい“人間ドラマ”を展開します。
■■■■■
激動の明治・昭和に挟まれた「大正時代」。
そこに君臨していた男の記憶は現代からは既に遠い。
“暗君”であったと語られる悲劇の帝王、大正天皇嘉仁よしひと
しかし、その僅かな足跡は、人間らしい苦悩と喜びの交じり合った生涯が確かにそこにあったことを物語る。
明治天皇の唯一の皇子でありながら、
家族的な愛情に恵まれなかった少年時代。
父との軋轢を乗り越え、自我を確立した皇太子時代。
そして帝王としてあまりに寂しいその引退とその死。
今や語られることのない、
忘れられた天皇のその人生、その愛とは?
■■■■■
2013年初演。
2014年に第21回読売演劇大賞・選考委員特別賞を受賞。
同賞の優秀男優賞(西尾友樹)、優秀女優賞(松本紀保)、優秀演出家賞(日澤雄介)にも選ばれた話題作が、待望の再演です。 

チケット/
一般前売 3,000円
学生前売 2,000円
当日(一般・学生とも) 3,500円
【日時指定・自由席】
 

劇団チョコレートケーキ『治天ノ君』インタビュー

choco19月21日・22日に提携公演として登場する劇団チョコレートケーキ『治天ノ君』の上演に先駆け、劇作を担当した古川健さんと俳優の西尾友樹さんに作品についてお話しいただきました。


■作品について
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古川健

古川:『治天ノ君』は2013年に下北沢の駅前劇場で初演した作品で、大正天皇・嘉仁(よしひと)を主人公に、皇太子時代の青年期からその死までを描いた一代記です。物語は大きく分けて、嘉仁が青年期に明治天皇との軋轢や孤独を経て、天皇として即位し自我を確立するまでの前半と、病に倒れて皇太子(のちの昭和天皇)を摂政に立てるまでの後半から成っています。“治天の君”とは中世の日本史用語で、院政期に天皇家の実権を握った上皇や法皇の呼び名です。この話には、明治・大正・昭和と三人の天皇が登場するのですが、大正・昭和時代にも、明治天皇が呪縛のように大きな影響力を与えるので、このタイトルを付けました。でも、主人公は大正天皇です。松本紀保さん演じる大正天皇妃―貞明皇后節子(さだこ)がストーリーテラーとなり、昭和時代から明治・大正を振り返るといった構造で、回想として語られます。


 なぜ大正天皇を題材にしたのかというと、近代天皇制以降、今上天皇で4人目ですが、そのなかでも今の我々にとっていちばん印象が薄い存在だと思うからです。僕自身、遠眼鏡事件(国会で勅書を丸め、遠眼鏡にして議員席を見渡したとされる事件)や、ちょっと頭が弱かったのではないかという俗説しか知りませんでした。ところが、政治学者の原武史さんが書かれた『大正天皇』(朝日新聞社刊)を読んで、実はそうではなかったと知り、一般的なイメージとは違う大正天皇を主軸にした物語を書いてみたいと思いました。調べていくと、明治天皇のように神秘性を持っていることを理想の天皇像としたときに、大正天皇はそこから外れるような人間性だったという記録が残っています。例えば、皇太子時代、巡啓として全国各地を旅したときに気軽に国民に話しかけてしまったり、昔の同級生の家を突然訪問したり…。そういうエピソードを拾っていくと、とても魅力的な人間味溢れる人だと感じましたし、そういうことが知られていないのはもったいないと思いました。僕は歴史的な事件や人物を題材に作品を書いていますが、決して史実を忠実に再現したいのではありません。生身の人間らしさがふっと浮かびあがってくるエピソードがあれば積極的に取り入れていますが、基本的には創作ですし、描きたいのはchoco5、今の我々とは違う歴史状況のなかで、人間としてどう生きたか、どんな思いを持ち、どんな苦悩があったのかということです。「天皇」という存在は、戦後にこそ“象徴”となりましたが、戦前は“現人神(あらひとがみ)”だったわけです。そういう存在が、ひとりの人間として、立ったり座ったり、人と話をしたり、物事を感じて、悲しんだり喜んだりするさまを描き、それを演劇というナマの表現を使って、役者さんの肉体を通してお客様に届けたいと思っています。


 もうひとつ、「戦前」という時代の流れを描きたいと思いました。我々は明治・大正・昭和前期を「戦前」と一括りでとらえてしまいがちですが、やっぱりそれぞれの時代の特徴があるわけです。明治天皇と昭和天皇に挟まれた大正天皇を取り上げることで、明治から大正、大正から昭和という時代の流れが描けるのではないかと考えました。また、原敬や大隈重信や牧野伸顕といった実在の政治家を登場させることで、各時代の天皇をとりまく政治家たちが、何を考え、どう時代を動かしていったのかを、わかりやすく板の上にのせたいとも思っています。

 

■「天皇」を演じる
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西尾友樹

西尾:大正天皇を演じるんだという気負いはありません。どちらかというと、泣いて、笑って、怒って、身体を悪くしても天皇という位にしがみつこうとする、ひとりの人間を舞台上に引きずり出すんだという思いのほうが強いです。それは明治天皇と昭和天皇を演じる二人も同じです。もともと僕たちの劇団は、イメージで役を演じないということをすごく大事にしていて、目の前にいる人間と会話をし、シーンを重ねて、事件を重ねて、それが歴史に繋がっていくという創り方をしています。だから、皇室の話をするぞとか、タブーに切り込むぞというのではなく、丁寧に丁寧に人間のドラマにしていきたいです。ただ、お辞儀の仕方や手の組み方などの所作にはこだわっています。初演のときに、演出助手が皇室の作法やロイヤルマナーの本を探してきてくれたのですが、それを参考に毎日繰り返し稽古をして、そして、その所作にどこまで気持ちを載せていくか、思いをどれだけ滲み出していくかにトライしています。ちなみにその本には、周りへの気配りを偏らせないよう、意識の飛ばし方は360度ムラなくというのもあるんですけど…、それはさすがに会得できなかったです(笑)。
 先日、平成天皇の生前退位のニュースがありましたが、この物語でも天皇を「やめる」「やめない」「やめろ」「やめるな」みたいな話が繰り広げられています。天皇って、文化や平和の象徴であって、かつ国の威信の象徴でもありますよね。だから「やめます」といって簡単にやめられるものでもない。物語の後半、嘉仁が髄膜炎という重い病気を患い、肢体不自由になって言語も危うくなり、記憶も飛び飛びになっていきます。それでも天皇という位にこだわる姿を演じてみて、きっと苦しんでいらっしゃったのだろうなと思います。

 

古川:史実として、大正天皇は晩年、皇太子(のちの昭和天皇)を摂政に立て、実権をすべて譲って引退します。ただ、そこに大正天皇の意思は無かったのではないかという学説があり、今回はそれを参考にしました。そうした葛藤を描くことで、彼の「天皇」という存在に対する思いや、運命に対してどう生きたのかという生き様が浮かび上がってくるのではないかと思っています。


西尾:病気の症状が、大正天皇自身に実際どのように出たのかはわかりません。だから、病気のことを調べ、こういう症状が出たら身体の半分はこうなる、歩き方はこうなる、喋り方はこのぐらい不自由になるというのをなるべくリアルにやりました。カタチを細かく決めて、不自由になってもここまでは立っていられる、座っていられる、歌うことができるという状態を、今回も嘘つくことなくやりたいと思っています。


古川:僕は、西尾くんの俳優としていちばん好きなところは再現性とこだわりです。キャスティングは演出の日澤に一任しているのですが、書いているときから大正天皇は彼にやってもらいたいと思っていました。病んでからの身体的な表現も西尾くんならごまかすことなく真正面からやってくれるだろうと思いましたし、逆に、青年期の颯爽としたところとの演じ分けも、彼なら信頼して託せると思いました。


西尾:僕自身は芸の幅が広いわけではないので、素直に相手役とどう繋がっていくのかを考えています。正直、最初に台本を読んだとき、どういう物語なのか掴みあぐねました。皇室の話だから、事件も起きないし、犯人もいない。でも、稽古をしていくと、この人のことを慕っているからこういう会話をするんだとか、怒られているけどこれは愛なんだなとか、そういう関係性がみえてきました。ただ、役者が立ち上げないとみえてこない関係性もあって…、難しい本だと思います。例えば、登場する政治家は本音を言わないから、そういう人間が大正天皇の周りを固めると、本当に天皇のことを慕ってくれているのか疑念が湧くんです。そういうところは古川さんに、政治家も思惑があるから天皇の前でそう発言するんだと教えていただき、繋がるように細かいところは埋めていきました。

 

■再演にむけての見どころ

古川:再演にあたり、改稿しようと読み直したのですが、ここを変えるとあそこも変えなきゃいけないとなってしまって…、結局このバランスを保ったままのほうがいいと判断し、初演からほぼ手を加えずに、あとは演出に委ねています。僕はもともと、長く書いてしまうタイプでして、この作品の初稿もそのまま上演すると3時間半ぐらいあったんです。初演のときは、稽古場でそれを三分の一ほど切ってもらい、2時間ぐらいになりました。カットしたり残したりする作業は僕が作家としてやるよりも、演出家が現場をみながら塩梅をとったほうが絶対によくなるだろうと思い、日澤に任せました。だから上演されたものをみると、僕の作品ではあるんですが、稽古場で演出家と現場の作業を経ていますので、僕一人だけのものとは言い難くもあります(笑)。


西尾:日澤さんの演出は、台本を切ることは情報量を減らすことではない、切った部分は役者が表現してくれという考えなので、初演でもカットした部分は役作りに活かしました。今回も、演出は、古川さんが初演から変えないと言った時点で、それでいくというスタンスをとったので、大きな変更はないです。ただ、初演よりも人間関係の見つめ方をもっともっときつく、煮詰まった作品にしようとは言っています。


古川:大正天皇と皇后節子の夫婦愛もこの物語の柱の一つです。今回も皇后節子を松本紀保さんにお願いしたのですが、本当に、皇室の方にしかみえないような高貴さがあります。そこはぜひとも劇場でみていただきたいです。


西尾:貞明皇后節子について書かれた本に、大正天皇の記述があるんです。例えば結婚式のときのエピソードで、緊張している節子のところに嘉仁が現れて、「すごく退屈だね、これあと何日続くんだろう」と話しかけてきて、それで節子さんの気持ちがすごく楽になったとか。紀保さんと、「こういう関係性、面白いですね」という話をしました。身体の悪い天皇と寄り添っている妻というより、そういう小さなエピソードを拾って拾ってつなぎ合わせて膨らませて、皇族というのではなく、どこにでもいる夫婦の姿をつくれたらと思っています。

 

■劇団について

古川:劇団チョコレートケーキは、俳優の近藤芳正さんのユニット「バンダ・ラ・コンチャン」と合同公演を今年1月に富田林市のすばるホールで行ったのですが、劇団単独での関西公演は今回が初めてです。僕たちは駒澤大学の劇研仲間が母体となって2000年に旗揚げした劇団です。旗揚げ当初は僕も演出の日澤も役者をしていました。ところが座付きの作・演出家がやめてしまい、誰かが書かなくちゃいけない状況になり、仕方なく僕が書くことになりました。最初はオムニバスの現代口語劇や、宮沢賢治をモチーフにしたものを書いていたんですが、もともとそういう状況で書き始めたので、どちらかというと書くのは好きじゃない(笑)。それで、自分の好きな歴史を題材にしたら、この苦しい作業が少しは楽になるんじゃないだろうかと思い、浅間山荘事件をモチーフにした作品を書いたところ、仲間内の評価もよくて、お客様も喜んでくださったので、じゃあこの路線でやらしてもらおうと今の作風になりました。ちなみに一度だけ演出もやったのですが全然うまくいかなくて…。それで見るに見かねた日澤が名乗り出てくれて、2010年ごろから作・演出を分けた今のスタイルに落ち着きました。劇団員は現在、俳優3名、作家、演出家、制作の計6名。良く言えば少数精鋭、悪く言えば零細、非常にミニマムな劇団です。


西尾:僕は大阪府出身で、大学進学を機に東京に出ました。何作品か客演として出させていただいたのち、劇団員になりました。僕たち、今でも諸先輩方から劇団名を変えたらとよく言われるんです。甘ったるい劇団名なのに、ヒトラーとかサラエボ事件を取り扱うなど、作品の内容がかなり尖っているからでしょうね。


古川:劇団名には、誰からも好かれるような劇団でありたいという願いが込められているんです。チョコレートケーキを嫌いな人ってあまりいないですよね。甘いものが苦手な僕も、チョコレートケーキだけはおいしく食べることができるので(笑)。

 

■ツアーのこと

古川:ありがたいことに、『治天ノ君』を再演してほしいという声をいただき、僕たちもどこかのタイミングでやりたいと思っていました。今、トム・プロジェクトという事務所に劇団ごと所属しておりまして、力を貸していただき今回のような大規模なツアーになりました。演劇をやっている以上は、全国各地でいろんなお客様に出会いたいですし、精一杯良質な演劇をつくり、できる限りいろんな場所で公演して演劇という表現を知ってもらうことが、我々が“演劇”にできる貢献だと思っています。今回はその第一歩なので、ものすごく楽しみです。
 ロシア公演は、昨年亡くなられた劇評家の村井健さんがきっかけです。日露演劇会議などを通して日本とロシアの演劇交流に尽力された方で、『熱狂』を観にきてくださって以来、すごく気に入ってくださいまして、向こうでも僕たちの劇団のことを話題にしてくださっていたようです。それで、先方から追悼公演のようなかたちで来てほしいとお声をかけていただきまして。ただ、うちの劇団単独では渡航費等は出せなくて…。それで、トム・プロジェクトさんと相談し、助成金をいただき、日露演劇会議の方にコーディネートをお願いしまして、オムスクも含めロシア3都市公演が実現しました。


西尾:題材が天皇だったので、僕たちもデリケートになっていたんですけど、初演のとき、東京ではすんなりと受け入れられたんです。この物語は、天皇の話というより天皇“家”の話で、家族の物語という側面も多いのですが、そもそも皇室を扱うことについて、他地域では褒められるのか怒られるのか…。実は昔、地方公演で上演中にヤジをとばされた経験があって。ただ、賛同だけでなく、手痛いものも含めて、いろんな反応を楽しみにしていますし、何を言ってくれてもいい、石投げてくれてもいいというぐらい強度のあるものを僕たちも作らないといけないと思っています。その観客の受取り方も含めて演劇という文化なんだといえるような作品にしたいです。


古川:演劇は、TVや映画と比べるといい意味で題材を自由に選べますし、それが小劇場のメリットだと思います。何かに囚われて天皇について書けないのではなく、むしろそのタブーに踏み込むことで、面白いお芝居がつくれたら、それはすごいことなんじゃないかと思っています。やっている側はこわごわですけど(笑)。今回、題材はチャレンジしましたが、話の核にある感情は、親子の愛だったり夫婦の愛だったり、どこにでも転がっているような、ありきたりな、でもとても大事なことであったりします。だから、題材を超えたところで、そういったことへの共感を、それぞれの公演地で―それはロシアでも(笑)―、勝ち取っていけたらと思っています。 


【提携公演】
劇団チョコレートケーキ
第27回公演
『治天ノ君』
作:古川健 演出:日澤雄介

 

平成28年
9月21日(水)19:00
9月22日(木・祝)14:00
公演詳細

上海太郎カンパニー『プリンセスよ永遠に』

平成27年8月28日(金)~30日(日)

平成27年
8月28日(金) 19:00
8月29日(土) 15:00/19:00
8月30日(日) 13:00
※受付開始/開演の60分前。開場/開演の30分前。

 


ダンス、マイムなど、言葉を使わず俳優の身体だけで舞台を展開する上海太郎カンパニーが、4年ぶりにアイホールに登場。動きや身振りだけで演じる“スラップスティック・コメディ”の要素を取り入れたミュージカルを創り上げます。
居酒屋フェアリーテールで日本酒をあおりながら白雪姫は愚痴っていた。いつも騒がしい小人たち、存在感のない王子、そしてプリンセス学院を主席で卒業して以来ずっとこなしてきた、お姫様という仕事・・・。「あ〜、もう飽きた」。彼女の声に振り向いたのは、やけ酒を飲んでいた同じ学院の卒業生ベル、オーロラとシンデレラ。4人はそれぞれが演じる役を交換することになり・・・。
おとぎ話のプリンセスが総出演するドタバタ喜劇に、どうぞご期待ください。


チケット料金/
前売=3,500円 当日=4,000円
学生=2,500円(前売・当日共)
【日時指定・整理券番号付自由席】

伊丹想流私塾マスターコース 
リーディング公演『アマゾン川委員会』
平成27年9月5日(土)

平成27年9月
5日(土)19:00
※受付開始・開場/開演30分前
★終演後に合評会を行います(司会:岩崎正裕)


★公開ゲネプロのお知らせ
 好評につき、予約枚数終了しましたため、急きょ、以下のとおりゲネプロを公開いたします! ぜひご来場ください!
9月5日(土)16:00~
※受付開始・開場/開演15分前
※上演時間/約80分
※合評会はございません。
※写真撮影ならびにビデオ撮影を行います。予めご了承ください。

■料金/
300円


伊丹想流私塾の上級クラスとして10年目を迎えた「マスターコース」では、受講生によって多くの長編戯曲が生み出されています。その作品群から、岩崎正裕と中村賢司がおススメする秀作を、ドラマ・リーディングとして上演。新進劇作家とその戯曲を紹介します。


■会場/
アイホール2階 カルチャールームA

■料金/
500円 【限定40席、要事前予約】

 

■作品紹介/
『アマゾン川委員会』
▽“パーフェクト・ウォーター”を求めて山村にやってきた地上げ屋二人。熊に追われ、よじ登ったのは野球場のボロボロのバックネット。絶体絶命の彼らがとった行動とは…。
▽日本で「占いの館」を営むアフリカ人のバナさん。特殊能力を持つ彼女には極秘の相談が絶えない。外務官僚の依頼に応えるため洞窟で彼女が行った儀式とは…。
▽国連インターンシップを経験した世界各国の若者が集うSNS。彼らのなかで「ある噂」が広まりはじめ…。
点在する情報が絡み合い、やがて世界の終わりを予感させる緊急事態が明るみになっていく。果たして人類はこの危機を回避できるのか?

 

■作家プロフィール/
伊地知克介(いじち・かつゆき)
マスターコース第7期・第8期にて、岩崎正裕・中村賢司に師事。「劇団大阪」で上演された『運転中』が第19回OMS戯曲賞最終候補に残る。高槻市のシニア劇団「恍惚一座」に『カヌー・ラジオ』(2014年)、『アトリエ・ジャマイカ』(2015年)の二作品を書きおろす。『アマゾン川委員会』は、マスターコース第8期在籍中に執筆。第14回AAF戯曲賞最終候補作。


■主催/公益財団法人伊丹市文化振興財団・伊丹市
文化庁平成27年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

大阪芸術大学短期大学部
メディア・芸術学科 夏公演2025
JUMP OVER!!

令和7年8月7日(木)~8日(金)

令和7年
8月7日(木)
15:00『情熱大学』
18:00『どくりつ こどもの国』

8月8日(金)
11
:00『どくりつ こどもの国』
13
:30『情熱大学』
15:30『どくりつ こどもの国』

入場無料【要事前予約】
※開場は開演の30分前。


この夏、あの感動のパフォーマンスが帰ってくる

大阪芸術大学短期大学部 メディア・芸術学科の舞台芸術コース、ポピュラーダンスコース、声優コース、ポピュラー音楽コースがクロスオーバーしてお届けするもりだくさんの2日間。


えほんミタイナえんげき『どくりつ こどもの国』
 舞台芸術コース(身体表現・舞台制作)
 ポピュラーダンスコース/ポピュラー音楽コース

 不思議な冒険!
 行こうオーロラを追って!

―舞台芸術コースからのメッセージ

北欧神話の世界観をベースに繰り広げられる、子どもと大人のためのファンタジー。ワルハラへと旅立った子どもたちは、知恵と勇気で魔法使いに闘いを挑みます。ダンス+音楽との共演で絵本のような世界が舞台に現れるでしょう。(身体表現)

照明、音響、美術のスタッフワークを全て担当!熱の籠ったこだわりの舞台をお届けします。(舞台制作)

―ポピュラーダンスコースからのメッセージ
たくさんの場面でダンスによる表現を披露します。踊ることの楽しさと躍動感!物語とのコラボレーションを追求します。

―ポピュラー音楽コースからのメッセージ
お芝居とダンスとの初のコラボ。20名を超える学生のハーモニー!
今回はゴスペルで舞台を盛り上げます!

『情熱大学』声優コース
 「声」によるパフォーマンス!豪華3本立て!
 ・外郎(ういろう)売パフォーマンス
 ・朗読劇『AI失格』
 ・テレビアニメーション生アフレコパフォーマンス

―声優コースからのメッセージ
毎度ご好評の声優コース夏公演!今回は豪華三本立てでお送りします。一つ目は声優登竜門課題「外郎売」をダンスを交え表現する「外郎売パフォーマンス」!
二つ目は、万博開催の今年だからこそ、お届けしたい朗読劇『AI失格』!そして三つ目は、子供から大人まで楽しめる、あ・の「テレビアニメ」を生で学生がアフレコします!
ぜひご家族でお楽しみください!!


主催:学校法人塚本学院 大阪芸術大学短期大学部
後援:伊丹市/公益財団法人 いたみ文化・スポーツ財団

 

燐光群『お召し列車』

平成27年12月11日(金)~12月13日(日)

平成27年
12月11日(金) 19:00
12月12日(土) 14:00/19:00
12月13日(日) 14:00

※受付開始/開演の40分前。開場/開演の30分前。


社会性・実験性の高さと豊かな表現力を兼ね備え、斬新で意欲的な演劇公演で評価を得ている燐光群。今回は、『パーマネント・ウェイ』『いとこ同士』など坂手洋二が描く「鉄道劇」最新作を、実力派女優・渡辺美佐子を迎えてお送りします。

新たな東京オリンピックに向け、天皇のために特別運行された「お召し列車」を一般にも公開して、海外からの来場者への“おもてなし”として走らせようという企画が持ち上がる。
ところが、昭和三十年代、ハンセン病患者だけを乗せる専用列車も、皮肉にも同じ名で呼ばれていたのである。この列車を中心に、日本の「戦後」と「昭和の記憶」を凝縮した「旅」の出来事を、演劇的冒険を駆使しダイナミックに描く新作。


チケット/
 前売 一般=3,600円
 U-25(25歳以下)=2,500円
 高校生以下=1,500円
 各券種当日=4,000円
 ペア=6,600円(前売りのみ取扱い)
【全席指定】

※25歳以下、高校生以下は要証明書。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。

土曜日のワークショップ特別編
『初恋ワークショップ~出せなかった手紙を出そう』

平成27年11月28日(土)・12月12日(土)

平成27年
11月28日(土)
12月12日(土)

各回10:00~12:00 ≪全2回≫

※1回のみの単発受講が可能となりました。


振返ってみてください。
自分ではない誰かのために、心をざわつかせた時間があります。
嬉しくなったり、楽しくなったり、走りだしたり、叫んでみたり、寝込んでみたり。 あの不可解きわまりない現象――それは恋。
これは、心ざわつかせたあの人への、届けたかったけれど届かなかった、届けたけれどもう一度届けたい、そんな劇的な言葉をもとに、ちょっと演劇めいたものを作って、いいオトナたちが、エヘヘ、ウフフと盛り上がる。そんなワークショップです。


会場/
アイホール カルチャールームA(2階)

対象/
2回連続受講できる方。

中学生以上

定員/
16名程度(先着順)

受講料/
一括納入:1,000円 

1回のみ:500円
※2回連続受講。
※初回時納入。一旦納入した受講料は返金できません。ご了承ください。

※2階連続受講いただくと、よりワークショップを楽しんでいただけます。


主催/公益財団法人伊丹市文化振興財団・伊丹市

助成/一般財団法人地域創造

文化庁平成27年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

伊丹想流私塾マスターコース
リーディング公演『夜明け前』
平成27年12月20日(日)

平成27年
12月20日(日)15:00
※受付開始・開場/開演30分前
★終演後に合評会を行います(司会:岩崎正裕)


伊丹想流私塾の上級クラスとして10年目を迎えた「マスターコース」では、受講生によって多くの長編戯曲が生み出されています。その作品群から、岩崎正裕と中村賢司がおススメする秀作を、ドラマ・リーディングとして上演。新進劇作家とその戯曲を紹介します。第2弾はマスターコース第5期で書き上げた小野亮子の『夜明け前』を上演します。


会場/
アイホール2階 カルチャールームA

料金/
500円 【限定40席、要事前予約】

 

作品紹介/
『夜明け前』
もう、どうでもよくなりました。
なんやねん。
もう、めんどくさくなりました。
ほんま、あほみたい。
 
どうしようもなくくたびれて
絶望の中をあるいているくそめんどくさい30過ぎの女、と。
かっこ悪すぎて絶望的な50過ぎのおっさん、の。
夢と現のたわいない色と音と記憶。
 
蝉の声、踏切の音、ある夏の日の話。

 

作家プロフィール/
小野亮子(おの・りょうこ)
30歳で演劇と出会う。音楽とプロレスを愛し、俳優としても活動する。マスターコース第5期にて、岩崎正裕と中村賢司に師事。
2008年、堺市民参加型演劇の戯曲講座「ドラマシアターSAKAI塾」(講師:棚瀬美幸、中村賢司)に参加。講座で書きあげた『父は、ゆく』が、翌年、市民劇団「ドラマシアターSAKAI」の『5人の作家の5つの視点』にて上演される。また、「朗読ユニット西表*iriomote*」に書きおろした短編戯曲が、竪穴式サーカスvol.3「べいべぇ」(2009年)や、西表主催ライブ『その歌を歌おうじゃないか』(2010年)でリーディング上演される。
また、ペーニャ大作(ギタリスト、レコーディング・プロデューサー)と、夏目一朗(松山千春のバンドマスター、アレンジャー)のユニットToy Flowerの1stアルバム『腹ふとい』(2015年7月発売)に収録された『どこまでも』の作詞を担当。


主催/公益財団法人伊丹市文化振興財団・伊丹市
文化庁平成27年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業