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今回の現代演劇レトロスペクティヴ各上演作品の原作資料をこのページで紹介します。

   

1987年、大阪の大槻能楽堂で再演時の『小町風伝』チラシ。
表面が一部金刷り、裏面はピンクとスミ1色。巻き三つ折りで構成されている。
初演から10年の時を経て、再び能舞台で上演された。

「(略)この舞台のもっとも大きな特徴は、舞台へ通じる〈橋がかり〉と呼ばれる通路があり、それは現実と虚構の中間地帯である。この劇はそのような特殊な形式をもった舞台を前提として創られているので、その形式を可能なかぎり再現したいと考えている。-太田省吾」
とある。
裏面にはスタッフ、キャストのクレジット。当時劇団員だった大杉漣が名を連ねている。

7月3日(金)、4日(土)、5日(日)に4ステージ行われており、マチネは15時開演だが、ソワレの開演時間が、19:15開演となっていることや、住所が東区上町(現・中央区)と記載されているところに、当時の様子が垣間見える。
今ではすっかり珍しくなったチラシ掲載の広告。

太田省吾氏の著書広告以外は関西圏からの出稿であることから、関西でこの作品が待ち望まれていたことが窺える。
裏面には演劇評論家の扇田昭彦、大笹吉雄、劇作家の別役実、各氏が寄稿した劇評を掲載。
また、右端には太田省吾氏自身のコメントもあり、

「(略)人間はしゃべっている
時間よりも、
黙っている時間の
ほうが
はるかに長い。
沈黙が人間の
常態ではないかと
思ったんです。
むろん、
沈黙のなかには
言葉がいっぱい
つまって
いるわけですが……。(略)」

と、ある。
詩人の伊藤比呂美、佐々木幹郎(当時、雑誌『新劇』で劇評連載を担当)両氏も寄稿。
その他に『タイムズ』『フィナンシャルタイムス』『ガーディアン』『タイムアウト』等、英国各紙誌のレヴューも掲載、この作品が国境を越えて、高い評価を得ていたことがわかる。
こちらは会場で販売されていた上演台本。
座談会でも語られた「はじめに」という文章が記載されており、上演に際しては、「[老婆]、[少尉]、[男]、[子供たち]印はすべて沈黙のうちにあって、〈科白〉として外化される事がない(略)」とある。
何故そんな演出をするのか、その理由が解説されている。