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今回の現代演劇レトロスペクティヴ各上演作品の原作資料をこのページで紹介します。

   

1984年に公開された映画『さらば箱舟』のパンフレット。 ART THEATRE GUILD(アート・シアター・ギルド。通称、ATG)という映画会社によって製作された映画には、 作品ごとに、この『アートシアター』という映画雑誌並みのパンフレットが発行されていた。 誌面は映画のシナリオと映画評論などから構成され、上映館のみで販売された。


ページをめくると『さらば箱舟』のビデオや、サントラ、他のATG作品のビデオシリーズが紹介されている。
͉こちらは映画の半券。
小川真由美、原田芳雄、山崎努の他に、高橋ひとみ、石橋漣司、天本英世、新高けい子等、他のキャストも豪華。

ATGは非商業主義的な芸術作品を製作、配給していた映画会社で、1961年~’92年まで活動。
初期はヨーロッパの芸術作品を主に配給し、後に、製作費1000万円という低予算の“縛り”の中で、数々の実験作、 話題作の製作に着手。後期には森田芳光、大森一樹、石井聰亙、井筒和幸などの若手を積極的に登用し、 後の日本映画界を担う監督がATGから育ったといっても過言ではない。

このパンフレットには、映画公開の前年1983年に逝去した寺山修司を偲んだ追悼の寄稿が見受けられる。 文化人類学者の山口昌男、朝日新聞記者の扇田昭彦、映画監督の篠田正浩のほかに、TV制作者、 ディレクターなど様々なジャンルの識者が早すぎる死を悼んだ。氏の才能に、多くの人々が影響を受けていたことが窺える。

こちらはシナリオと製作記録。クレジットには寺山修司と共に岸田理生が記載されている。
また、題字に山崎努、方言指導に「劇団空間演技」を率いた岡部耕大が名を連ね、小松方正、宮口精二等のベテラン俳優や、三上博史の名も。 ロケ地は沖縄だったことから、製作協力として沖縄の会社もクレジットされている。
(敬称略)