T-works 女優・丹下真寿美とプロデューサー・松井康人により結成されたプロデュースユニット。ハイレベルな脚本家、演出家、俳優を集い高水準の舞台製作を目指す。これまでの上演作品は『源八橋西詰』(作・演出/後藤ひろひと)、『THE Negotiation』(作・演出/村角太洋(THE ROB CARLTON))、『愛する母、マリの肖像』(脚本/古川健(劇団チョコレートケーキ)、演出/高橋正徳(文学座))で、いずれも大阪と東京で公演。
「break a leg(ブレイク ア レグ)」とは、これからパフォーマンスを始める人に向かって「成功を祈る」という意味で用いられるフレーズ。 本企画では、アイホールで上演機会のなかった若手表現者に会場を提供し、次代を担う才能の発掘・育成を目指します。 新風を吹き込んでくれる表現者たちの競演にご期待ください。
多くの公演が中止・延期に追い込まれた2020年であった。窮地に立たされながらも動画配信などの新たな試みに活路を見出だす演劇人の姿は心強い。けれども基本的には演劇は対面芸術である。感染症対策に充分に配慮しながら、そろそろ劇場を開けていくことも必要だと思われる。今回のbreak a legは、本来なら前年度に幕を開けていた二作品が並ぶ。選出された二団体は、共に社会の本質や裏面を見抜く洞察力に優れている。劇団不労社は「信仰」によるコミュニティを描くという。作者・西田悠哉さんの確かな力量には舌を巻く。現代日本の矛盾と断面を鮮やかに見せてくれるだろう。遊劇舞台二月病は一貫して「事件」を追いかける。今回は戦後間もない頃の事件から想を練るという。作者・中川真一さんの憂鬱が、現代社会とどのように共鳴するのか興趣が尽きない。共に新作とのこと。一年間温め続けた作品の、満を持しての登場である。惜しみない拍手を送りたい。
アイホール・ディレクター 岩崎正裕
きわめて緻密に描写された地域社会の日常が、徐々に緩い毒霧で包みこまれ、気づいた頃にはブラックコメディの荒唐無稽な世界へ誘われる劇団不労社。現実にあった事件へのストイックな取材から、加害者のにじみ出る熱情・悲哀の根源を、執拗かつ朴訥に紡ぎ続ける遊劇舞台二月病。選出の二団体は、ディテールへの過度なこだわりでもって漸次的に劇世界を波及させることに優れていました。 アイホールは日常の空間とは異なり、大きな距離のある空間です。多種多様な現象、情報によって価値観が大きく揺り動かされ全てが瞬時に感染していく不安定な今、距離を保たれた同じ空間の片隅から少しずつ積み上げられていく執心のミニマルな伝播は、日常では得難い劇体験となるでしょう。それはニューノーマルな小劇場演劇の萌芽となるかもしれません。break a leg!